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道具選びの眼

2012年8月6日

入門おすすめの道具3 餃子は厚板フライパン

お料理入門者にとっても、焼くという調理は、最も挑みがいのある調理かもしれません。 いわゆる、茹でたり煮たりの水を使う調理には、100度までしか温度が上がらない上限があります。 しかし、水を使わない焼く調理では、空焼き状態が2分も続けば、200度以上になってしまいます。 200度を越えれば、良い焦げを越えて、真っ黒焦げの炭と成り果てます。

ですから、そこにお料理人たる人間の存在価値もあると言えるのですが、 人間の側での調と理が必要となるのです。 言葉を変えれば、人間が本来もっている能力を発揮することであり、 それが存分に発揮できれば、内から喜びが湧き上がるのでしょう。それが、お料理の楽しさとも言えます。

そこで、焼く調理の要諦とは、温度の理(り)を悟り、温度を調(ととの)えるとも言えるでしょう。 まさしく、調理です。その時、五感を総動員させます。すなわち、目を、耳を、鼻を、手を、舌を使って 美味しさに至るのです。人間力を全開させるのが、焼くこととも言えるでしょう。

【選択の理由】 そこで、お料理入門者にとって、比較的失敗が少なく、しかも美味しく焼き上げるフライパンをご紹介しましょう。 それが、厚手の極JAPAN厚板フライパンです。 極JAPANシリーズのフライパンの厚みは、 1.6mm(フライパン28pのみ2.0mm)ですが、その2倍の3.2mmの厚みがあります。

板厚が厚いと、万が一火力が強くなっても、食材には過度に熱を伝えません。 厚い鉄板が熱をセーブしてくれるのです。すなわち、黒焦げを回避できる。 そして、板厚が厚いと、熱がフライパン全体に均一に広がって行きます。 薄いものは、発熱する箇所(ガス火で言えば、炎の触れる箇所)にのみ局部的に熱が伝わり、 水平方向に熱が広がって行きにくいのです。

すなわち、焼き目を綺麗に付けることができます。しかも、厚みのあることにより、穏やかに熱を伝えます。 そのため、表面を焦げ付かせずに、内部に程良く熱を届けることができます。 すなわち、内部が生焼けでもなく、焼き固まってしまうのでもなく、 理想形の柔らかくジューシーに焼き上げることができるのです。

【道具への着眼】 1998年からフライパン倶楽部を立ち上げて、 使い手の皆さんからの声が届くようになりました。 それが今日の「ユーザーの声」というページに至ります。 その声の中で、特に印象深かったのは、まだ 極シリーズが発売される前の レギュラータイプの厚板フライパン(当時はザ・オムレツという商品名)の評判でした。

当時まだまだ認知されていなかった、この厚手のフライパンが、 使い手の声を公開することによって、一気に当店の看板商品となりました。 このような厚手のフライパンは、重くて扱いづらく、それだけで敬遠されていたようです。 しかし、重くとも、焼き上がりが抜群に良いことが分かったのです。 論より証拠で、こちらで説明する以上に、実際に使われた方の声は雄弁でした。

今回は、改めて、 厚板フライパンの声を こちらのページに整理してみました。 なお、極シリーズは、レギュラータイプの 厚板フライパンと形状も厚さも全く同じですが、 錆びにくくなる熱処理が表面に施されているため、扱いが楽になります。 レギュラータイプでは、使いはじめの空焼き作業が必要ですが、 こちらは購入されてすぐにご利用いただけます。

【調理のポイント】 まずは、予熱と油返しを行っていただきます。 ガスの中火、または電磁調理器(IH)では中レベルで90秒ほど予熱していただきます。 60秒ほどの時点で、100〜150ccの油を入れて10秒ほどそのまま加熱します。その後、オイルポット等に油を返します。コンロにフライパンを戻した時点で90秒になるのを 目安にしていただき、餃子を並べて行きます。

予熱後の火加減は、少し弱めていただいても良いです。 やや餃子の皮に色目がついてきたら、 餃子の高さの3分の1が浸かる程度のお湯をフライパンに注いで蓋をします。 この時、やや火力を強めていただいても良いでしょう。 音がなくなったら、蓋をとって、胡麻油を全体に廻しかけます。

それ以降の火加減は、弱火(ガス中火の炎の半分の高さの火)ないし トロ火(弱火よりさらに小さめの火)で、電磁調理器(IH)では弱レベルで、しばらく焼きます。 蒸して柔らかくなった皮が固まり、焼き目がついて参ります。 底面の焼き目をチェックしながら、お好みの焼き目となったら完成です。

取り出す時も丁寧に扱って下さい。鍋と餃子の底面の間にターナーを入れて、サッと取り出します。 頑固にこびり付いていても、ターナーを入れれば、ポロリと取れます。 この場合は、事前に菜箸でつついても良いでしょう。 蒸した後に、すぐに取り出すと、澱粉質の皮がまだ固まっていないために破れてしまうことがありますので、必ず弱火でしばらく焼いて下さい。

今回は、 バーミックスを使って手作りの餃子を作り、これを極 厚板フライパン26pで焼いてみました。右は予熱時に油返しをした後の状態です。油が波打つ感じとなります。

極 厚板フライパン26pで餃子(皮の直径8cm)が22個並びました。しばらく中火で焼いた後で 餃子の高さの3分の1までお湯を注ぎます。すぐに蓋をして、しばらく蒸しています。

水がすべて蒸発して蓋を取った状態です。この後、ごま油を振りかけて弱火でしばらく焼きます。 右が今回出来上がった餃子です。

【道具の注意事項】 やはり、何よりも火加減が重要です。 強火は必要ないばかりか、食材を台無しにしてしまいますので厳禁と受け止めて下さい。 厚手のフライパンは、少し長めに予熱をしていただき、その後は弱火で焼くことが原則です。 美味しさの秘訣は、「弱火でじっくり焼くこと」と理解されると良いでしょう。 この点を、特に心がけていただければと思います。

加えて、よく目を開いて、鼻を利かせます。食材を観察して、火にかける時間を調整します。 こんがりとキツネ色になった時、美味しい薫りが漂って来た時が焼き上がりのタイミングでもあります。 また、黒く焦げてしまった時、焦げた嫌な臭いが漂ってしまった時は、時すでに遅しとなります。 そのことを次回に生かして行きます。時間をつかんだら、次回からはタイマーを使うと良いでしょう。

なお、フライパンに厚みがあることのデメリットは、重くなることです。 美味しく調理はできますが、扱いづらくなる点は、ある程度覚悟して下さい。 ただ、調理中はフライパンを置いたまま調理しますので、結果としては出し入れの時や お手入れの時に多少不都合を感じられる程度と言えるのかもしれません。 そのため、日常用には、もう少し軽いフライパンを使って、使い分けるのも一つのスタイルだと思います。

【あると重宝な周辺道具】 油返しを習慣にしていただくためにも、 寸胴型ミルクポットがあると重宝です。場所をとらずコンロ脇に常置しておけるので、手軽に油返しができます。 こちらは、どうしても油が尻漏れしてしまいますので、受皿もあると便利でしょう。 なお、確実にこぼさず注ぐことを優先させるようでしたら、口径の広いホームピッカー等の オイルポットをおすすめいたします。

そして、使用後は、なるべく調理後の早い時期に、 亀の子タワシで磨いていただければと思います。基本的には洗剤は使わず、亀の子タワシで洗い流して下さい。 また、頑固に焦げ付かせてしまった時は、研磨力のある ナイロンたわし等でゴシゴシ磨いて下さい。 フライパンの外側などは、油焼けしてしまい、黒くなりますが、この部分も ナイロンたわしにクレンザーなどを含ませて磨いていただくと良いです。

加えて、餃子を取り出すときには、マルタマのステンレスターナーオクソのソフトターナー等があると重宝です。 これらは、食材底面と鍋の間隙に気持ちよく入り込んで行き、鍋にくっついた餃子等を 取り出すことができます。

【サイズ選びのアドバイス】 専門店の長年経験からしますと、3〜4人を想定した一般家庭でのフライパンの標準的なサイズは 26pまたは24pのどちらかとなります。 今回の極JAPAN厚板フライパンの場合は、餃子を想定した場合でも、 底面積がより広くて一度に沢山焼けることが求められているように思います。

餃子の場合ですが、直径8cmの皮の餃子でいくつ並ぶかを試してみました。 26pサイズは、上記のように22個、24pサイズは16個、28pサイズは25個でした。 餃子の皮は市販のもので、1袋25個入っていましたので、28pサイズならちょうど1回分となります。

改めて、何人分の料理をされることが多いのか。 大雑把な目安としては、1〜2人分なら24p、3〜4人分なら26p、 5人以上なら28pと言ったところでしょうか。 あるいは、コンロにフライパンを2つ並べて焼くスタイルもあると思いますので、 その場合には、1つだけですべてをと考えなくても良いでしょう。

調理上の焼くという営みは、人類が誕生した太古から始まり、 人類の叡智が結集されて来たものでもありました。 先人たちは、どうしたら美味しく食べれるのか、あくなき追求をして来たのです。 生の肉を加熱すると美味しくなることを悟ります。 そして、仮説を立てる。実験をする。検証をする。それらを繰り返します。 そこに文化が花咲き文明が生まれて来ました。 その意味では、焼くと言う行為には、人間が人間である原点が潜むのかもしれません。

しかし、いつしか文明の利器と呼ばれるものに依存するばかりで、 お料理において本質的なことである、考えることをしなくなった。 もはや、お料理に理はなく、お料理とは退屈な作業程度に過ぎません。 それは、お料理の退廃というよりも、人間の退廃と呼んでも良いのかもしれません。 そこで、厚手のフライパンで焼くことの醍醐味を体験いただけば、 先人たちの息吹を感じながら、お料理の基本はもちろん、 人間らしさを回復できるのではと期待してしまうのです。

うまく焼けない時は右を参考下さい。 餃子を焼く時の注意点:道具のアフターケア

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