昭和の時代によく見かけた蒸し器は、わが家の味を象徴するような存在でした。
蒸し器は、電子レンジに対して、むらなくゆっくりと加熱ができます。
結果として美味しくなる蒸し物は、先人たちの知恵が詰まった調理でもあります。
まだ土器がない太古の時代には、掘った穴に食べ物を入れ、そこに焚火で焼いた石も入れます。
この石に水を振りかけて蒸気を出し、その蒸気で食べ物を蒸していた。
そして、この時代こそ、お料理の原点に返るべく、蒸し物を再考すべきでしょう。
料理鍋に中華セイロを組み合わせて使います。
蒸すことは、茹でるとは違い、水とともに旨みや栄養が流出しません。
また、水蒸気は自由自在に動き回り隙間にも入り込み、満遍なく食品全体に広がり、むらなく加熱することができます。
加えて、その加熱もゆっくりと穏やかに行われる。
魚を茹でる、焼く、蒸すの3通りで、中心部の温度変化を比較すると、
ゆるやかに温度上昇していくのが、蒸すことになります。
同じタンパク質でもある肉も同様ですが、ゆっくりと温度をあげる方が、ふっくらと仕上がります。
そこで、おすすめできる蒸し器の一つが、昔ながらの中華セイロです。
木と竹でできているため、水分を適度に吸収してくれます。
また、金属製のものに比べて、木と竹の材質は、断熱性があるために、熱が外に逃げません。
放熱されないのです。結果として、蒸篭の中を高温化に保つことができるので、
早く仕上がり、水っぽくなりません。
さらに、蓋から蒸気を適度に逃すので、この点でも水ぽっくならず、蒸気の対流や循環を良くします。
また、蒸し物は、水が沸き立った状態で食品を蒸し器に入れます。
基本的に終始強めの火で、100度の状態を保たせて調理します。
よく沸き立った状態の方が、魚や肉などは、臭いも飛ばしてくれます。
そして、火にかける時間が超過しても焦げる心配はなく、大きな失敗には至りません。
このように蒸し物は、美味しいばかりではなく、お料理初心者にも優しい調理なのです。
食材そのものの味を生かすこと。全体からむらなく、ゆっくりと温めること。お料理の本質まで学べます。