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美味しさの科学

2011年5月14日・2020年3月6日改訂

加熱講座12 本道の煮物

まず、茹でると煮るの違いを考えてみます。 茹でるとは、熱を通して柔らかくしたり、アクを抜いたりと言った料理の下処理です。 対して煮るとは、味を付ける仕上げの作業となります。味付けが目的です。 そのため、煮るには調味料が付きものです。 ただ、茹でる場合でも、塩などを使うことがありますが、 それは味付けのためではなく、あくまで色止めなどのためです。 そこで、煮物に調味料を加える順序として、「サシスセ」と昔から言われています。

サは砂糖、シは塩、スは酢、セは醤油です。 はじめに、砂糖を入れます。それは、食材の中に塩をしみ込ませやすくするため。 そして、塩を入れるので、食材の中に塩が浸透して行きます。 次に、酢と醤油ですが、これらには香りがあります。 香りは、蒸発しやすいので、最後に加えます。 特に、醤油は、加える量の半分から三分の一くらいは、火を消す直前に入れて香りを生かします。 なお、濃口醤油は色が強く付きやすいため、薄口醤油を使うと良い場合もあります。

kaicoパスタ鍋のような深型鍋は、おでんやシチューの乳化を促進させます。

煮物の美味しさの秘訣は、食材を同じ大きさ、同じ厚さに切ること。 大きさが違うと、火の通り方にも違いが出て、 柔らかいもの硬いものが入り混じり、味にも濃淡が生じます。 そして、魚やイモ類を煮る時には、落とし蓋を役立てます。 これをかぶせることにより、上部にも、ほどよく味が染み込んで行きます。 蓋の重みで、具の動きを抑えることができるので煮崩れを防げます。 もう一つ、浅型の鍋を使うと、具が積み上がらず、綺麗に仕上がります。

煮魚の場合は、煮汁が沸騰してから、魚を入れます。 これは、魚の表面のタンパク質を硬めてしまうためです。それによって、魚の旨みが逃げません。 かたや、根菜類やイモ類、豆類などは、水から食材を入れて煮込みます。 そして、柔らかくなったら調味料を入れます。 最初から調味料を入れると、内部の水分が引き出されて、調味料の染み込み方が悪くなります。 かたや、豆類は、事前に調味液にしばらく浸し、調味液でよく膨らませてから煮ます。

おでんやシチューでは、時間をかけて煮込むことによって、味が丸くなります。 その時、深型の鍋であれば、気泡が鍋底から煮汁表面まで到達せずに、煮汁内で消滅します。 その消滅した時の高周波で、乳化が促進されます。乳化とは、水と油が一体になることです。 しかも、大きめの鍋で容量が多いと、煮汁の重みといいますか、水圧で気泡が消滅しやすくなります。 なお、強火では、気泡は蒸気となって逃げやすくなってしまうので、弱火で煮込みと良いです。