「お料理をはじめたい」という男性が増えています。 また、「お料理のできる男性はかっこいい」との評価も高まっています。 「男子厨房に入らず」とは隔世の感があります。果たして、なぜかっこいいのか。 それは、「自分で考えて、自分で決断する」自立した人間を見ることができるからだと考えます。 そこで、自立を言い換えてみます。他人に寄りかからず、自分の力で生きて行けること。 それは、他人に寄りかからず、自分の力で食べて行けること。 それは、自分でお料理できることに通じるのでしょう。 かたや、この時代は、自立できない男性も増えています。 それは、科学技術が発達して便利なものが増えていることと比例しているようにも思えます。 インスタント品・コンビニ弁当・総菜品などが手軽に買い求めることができるようになりました。 電子炊飯器や電子レンジなどの家電調理器も普及しています。 その結果、ますます自分でお料理をしなくなってしまった。 すなわち、自分で考えなくなってしまった。自分で決断しなくなってしまった。 自分で責任をとらず他人任せになってしまった。 お料理と自立は密接に結びついています。
そして、いざお料理をはじめようとすると、情報は溢れているのですが、 お料理の本質から外れていることが多いため、お料理の醍醐味を味わうに至れない。 ここが大きな問題かもしれません。 お料理の手始めに参考にするレシピ本やレシピサイトというものは、 そのまま真似をすることが要求されているようです。 しかし、お料理の本質は、真似をすることではなく、お料理をする人が自分で考えることにあります。 ですから、これらでは、そのレシピ通りの料理はできたとしても、 自分の味をもつ自分で料理したことには至っていません。 ある意味で、レシピというものは、他人が考えたものであり、自分の方は思考停止に至りがちです。 そこには、自分がありません。 しかし、自分で考える本来のお料理は、主体的なもので、そこには自分があります。 そして、自分の味を体現することにこそ、やりがいと楽しさはあるのです。 しかも、最近の風潮は、お料理に「手早さと簡単」を求めてしまい、 本来のお料理からますます外れてしまっています。 やはり、そのようなお料理は美味しくありません。楽しくもありません。 お料理=他人任せの詰まらない作業と成り果てる。 今こそ、自分のあるお料理に立ち返ることが求められています。
そこで、フライパンを販売する仕事に20年間ほど携わった男性の私が、同じ男性たちに向けて、 この点で貢献できることがあるのではと思い立ちました。 あくまで、身近な料理教室や市販のレシピ本やレシピサイトとは一線を画します。 読者自身が「自分で考えて、自分で決断する」本来のお料理を体得していただくことを目指します。 また、仕事を通じて料理道具と対話して来たのが私の強みでもあります。 その強みを存分に生かしながら綴って参ります。 道具屋が教えるお料理教室、道具屋が書いたお料理入門書とも言えるかもしれません。 タイトルは、「男の料理事始」といたしました。 もちろん、男性だけではく女性の皆さんにも読み応えのある内容を目指します。
「自分で考えて、自分で決断する」料理こそ、お料理の本道です。 そんなお料理の世界にご案内させていただきます。 奇しくも今日は、日本が露国のバルチック艦隊と遭遇して勝利したことを記念する日。 わが国の男性たちが、真に立ち上がることを願って、こちらの連載を綴って参ります。 そして、自分でお料理をする、しないは、読者自身の手の中にあります。
男の料理事始 まえがき
男の料理事始 第1回ご飯を炊く
男の料理事始 第2回味噌汁を作る
男の料理事始 第3回目玉焼きを焼く
男の料理事始 第4回ホットケーキを焼く