「どうしたら、健康的で、おいしく食べられるか」これを考えていくことで、科学が生まれました。
まずは、美味しくなる仮説を立てて、実験を繰り返して、美味しくなる理論を打ち立てます。
そのためには、同じ結果が再現できる実験が必要となります。
そこで、重さ、時間、温度などの単位を定義して、それを計測します。
料理とは、文字通り料(はか)ることであり、その結果としての理である理論を求めていく科学でもありました。
重さはデジタルスケール、時間はデジタルタイマー、温度はデジタル温度計で、手軽に計測ができます。
そこで、卵は、ゆでる温度と時間によって変化します。
中心部の卵黄は65度、外側の卵白は80度で固まります。
そこで、12分以上茹でると、中心部まで80度となり、白身も黄身も全体が固まったゆで卵となります。
続いて、65度のお湯の中に1時間ほど浸しておくと、中心部まで65度となることで卵黄は固まり、卵白は固まっていない温泉卵をつくることができます。
このように、温度によって卵の状態が変わることを、先人たちは仮説を立て実験を繰り返して、つきとめています。
料理の食材には、美味しくなる温度、適温があります。
早稲田大学教授であった小林寛さんは、その考え方のもとに適温調理鍋「はかせ鍋」を開発されました。
鍋での料理は、水を入れて、煮たり、茹でたり、蒸したりします。
この時は、水があることによって、鍋内の温度は100度という上限があります。これを湿熱調理と呼びます。
しかし、焼いたり、炒めたり、揚げたりのフライパンの料理では、100度以上となります。上限は180度です。これを乾熱調理と呼びます。
そこで、フライパンの料理であれば、160〜180度の温度帯で熱を通していくことです。
この時に、香ばしい香りとあわせて、食材表面に狐色の美味しそうな色目が生まれます。
その香りには3種類あり、まずは、カラメル化と呼ばれる糖分の香り。
そして、油の香り、揚げたてのコロッケなどの油独特のカラッとした贅沢な奥行きのある香り。
最後に、メイラード反応と呼ばれる、タンパク質と糖分の化学反応によって生まれる、鰻の蒲焼き等の香りです。