味の素の冷凍餃子がフライパンにこびりつくとのことで、同社がフライパンを回収して対応する騒動が報じられていました。 こちらの記事をご参考下さい。回収したフライパンの数は2000にも及んだそうです。味の素社の対応を評価される方もいるようですが、個人的には少し違和感を感じました。 加えて、フライパンメーカーおよび販売店も反省する機会だと思いました。
まず、フライパンに問題があるのではなく、問題は使い方、特に火加減とお手入れにあることです。 ここをおさえておく必要があります。それは、フライパンメーカーや販売店が使い手に対してきちんと伝えるべきことです。 例え素晴らしいフライパンを開発したとしても、この基本が抜けてしまうと的外れとなります。 今回の事案では、そこが抜けてしまっていると感じました。
そして、市販されているフライパンのバリエーションが広いことを再認識すべきでしょう。 ところが、味の素社がパッケージに記載する調理方法には、 特にフライパンに関する指定がありません。 例えば、鉄やステンレスの金属が露出しているものであれば、予熱せずに餃子を置いてしまえばこびりつきます。 これは、金属と餃子の皮(タンパク質)は、50度になるとこびり付くからです。
そこで、予熱の意義が見えてきます。予熱で180度にしておけば、瞬間的に餃子の皮が焼き固まります。 しかも、油なしともうたっていますが、この油が金属とタンパク質の媒介物となって、こびりつかない作用も果たしています。 ただ、コーティングのものであれば、フッ素樹脂等により金属が露出していませんので、こびりつくことはありません。
加えて、油を敷くとは、フライパンにとっては本来必須のことであり、それは フライパンの表面温度のむらをなくすことに作用しているのです。 鉄のフライパンで予熱時に行う油返しは、それをさらに徹底させた美味しく調理する下処理なのです。 また、油は調味料であり、適温で美味しい香り出すことにもつながります。 油がなければ、独特の美味しい香りはありません。
そして、火加減ですが、今回の回収を通じて、中火とは何かを表記するに至ったようです。 すなわち、中火という概念は人によってとらえ方が実にさまざまであること。 そこで、ガスであれば、ガスの炎の先端が、ちょうど鍋底にかかる程度の火と定義されました。 電磁調理器では、800W〜1000Wと表記されていることは、相応しいと思います。
かたや、水なしとは、そもそも餃子の中に水分を多めに含ませているのかもしれませんが、 少し無理があるように感じます。厳密な意味では蒸し焼きとは言えないかもしれません。 適度な水があってこそ蒸気が生まれて、その蒸気が鍋内全体に広がってこそ、ふっくらと美味しく仕上がります。 中華セイロから出てくる蒸気で蒸し上げたものは、やはり美味しいです。
整理しますと、そもそも今回の餃子の「油なし水なし」とは、簡単便利ではありますが、 本来の美味しさとは真逆のものであるように思います。 もちろん、それなりの料理が出来て、それを美味しいと感じるのが現代的とも言えるのかもしれませんが、 健康につながる美味しさの理から外れてしまい、いろいろと無理が生じてしまうようにも思われます。
餃子がこびり付いてしまう方には、フライパンの適切な使い方、特に火加減とお手入れを周知していくことが大切です。 その点では、今日のフライパンの売り場は反省すべきでしょう。 売り方まで、簡単便利な合理性のみを追求してしまっていないだろうか。 売るとは、本来そんなものではない。手間ひまかけて使い手に語り掛けるべし。 あるいは、調理も本来は同じだと思います。