ステーキの焼き方の情報はさまざまあり、混乱している方も多いと思います。 そこで、科学的な視点で整理させて頂きます。その時のキーワードが、量・時間・温度の3つです。 これらに着眼すると、誰もが美味しさを再現しやすくなります。 今回は、特に温度を意識してご紹介して参ります。
美味しくなる温度および状態は、ステーキの内側(中心部)温度が60度前後となり、表面はカリッと茶褐色の焼き目が生じることです。 これは、ステーキに関わらず、魚や野菜など他の食材にも通じます。 外側はこんがりと、内側はふっくらとジューシーにと表現できます。
地元豊橋の鳥市精肉店さんの段戸山高原牛サーロインステーキ100g(厚さ2cm)です。 近日中に、こちらのお肉の紹介と実際に焼く実演動画(しあわせのお料理道具 in kitchen)を配信予定です。
そこで、まず加熱前のお肉を常温に戻しておくこと。 冷凍したまま、冷蔵したままでは、外側と内側の温度差が生じるなど温度がばらばらとなり、再現がしにくくなります。 そのために肉の内部まで常温にしておくと良いです。科学的にも、同じ温度、同じ条件ではじめることが大切です。
続いて、内側にある肉汁を閉じ込めるとジューシーに仕上がります。 そこで、フライパンの表面温度をむらなく180度にしておくと、瞬間的に表面が焼き固まります。 そのためには、厚手のフライパンで予熱すると良いです。予熱とはフライパンの表面温度をむらなく180度にすることです。
薄手のフライパンですと、予熱してもステーキを載せると温度が下がってしまいます。 かたや、厚手のフライパンであれば、予熱後は弱火で180度を維持することができます。 温度制御がしやすいのです。また、厚みがあることで熱量が多くなり、ステーキの芯(中心部)まで熱を伝えます。
加えて、ステーキに塩を振るのは、直前が良いです。 時間がたつと、肉汁が出て来てしまうからです。 また、塩を振った状態で加熱すると、表面が早く固まるので、肉汁も出にくくなります。 肉のタンパク質は、塩によって固まる温度が低くなるからです。
極PROフライパン22cmの厚板フライパンで焼いて参ります。少し長めの予熱ですが、その後は弱火で加熱します。
今回は、厚手のフライパンとして、極PROフライパン22cmを使用します。 こちらのフライパンが条件であれば、当店にあるパナソニックIH機器の中レベル(8段階で4 消費電力700W)2分30秒で約180度となります。 その後は、弱レベル(8段階の2または3 消費電力370〜500W)で180度を維持します。 お使いのコンロとフライパンで違ってきますので、そこを見極めて頂きます。
加えて、予熱時に、フライパン表面全体をむらなく180度にするため油返しをすることが有効です。油返しについては、 こちらのページを参考下さい。 そして、火加減と加熱時間は上記を参考にして、予熱後の火加減を弱レベルにしたら、塩を振ったステーキを投入します。 今回のお肉は4分間焼きます。裏返して、同じく3分間焼きます。投入後の火加減は、基本的に終始弱レベルです。
なお、今回の牛肉の厚さは2cmで、100g程度のものを焼いて参ります。肉の厚みや重量によって加熱時間に違いは出ますのでご注意下さい。 また、焼くと言うよりも、温める感覚で挑むことがおすすめです。 油煙が出る強レベルで焼かないことです。強レベルは予熱時も使用はしません。熱が特定のところのみ集中して偏るからです。
そして、出来上がったら、網を置いたバット等の上で、しばらく寝かせます。 内部に閉じ込めている肉汁を落ち着かせるためです。 肉汁が内部に浸透して、ナイフ等で切った時に肉汁が流れ出すことを抑えることができます。 その後、アツアツのステーキ皿に載せると、表面も冷めることなくアツアツで頂けます。
表面はこんがりと焼き目をつけて焼き上げますが、内部はふっくらとジューシーに加熱することで美味しさに至ります。
今回、科学的というタイトルにしましたが、それは誰もが同じ条件で行えば、同じ結果を再現できることです。 その点で、温度を指標にして頂くと、再現がしやすくなります。 また、使うフライパンやコンロ、あるいはお肉の状態など、常に同じ条件のもとで行って頂く前提があります。 すなわち、フライパンとコンロによって加熱の仕方は違って参ります。
これらの理屈が理解できると、厚手のフライパンの特徴が見えて参ります。 厚手のフライパンは、むらなく表面全体に熱を届けやすい。また、弱火で適温の180度をずっと維持できる。 すなわち、温度を制御しやすい。加えて、ステーキなど厚みのある食材の芯にまで熱を届けることができる。 すると、フライパンそのものも科学的であることが見えて参ります。
こちらの加熱講座もご参考下さい。