高額な電気炊飯器を購入すれば、その価格に見合った美味しいご飯を楽しめるのか。 家電量販店などの販売店に相談してみる事項ではありますが、 その前に炊飯の仕組みを理解しておくと良いでしょう。 お料理と構えは同じで、適正な情報を自ら収集して、自分で考えて自分で決断する。 そこに確かなお買物があります。
まずは、炊飯の仕組みをざっくりと整理します。 詳細はこちらのページ「自分で炊飯しよう」を参照下さい。 炊飯の原則は、「98度の温度を保って、20〜30分間加熱させること」です。 この事項を理解するためには、理論と言うよりも、一度お鍋で炊飯することをおすすめします。 そこで分かることは、100度以上の高温は不要であること。 沸騰した時の温度は100度ですので、ほぼそれを保てば良いことになります。 できれば、短時間に沸騰させると良い。そして、沸騰したら98度を保つことです。 これが電気炊飯器に求められる条件になります。 具体的に、短時間に沸騰させるためには、強力な火力が必要となり、 内釜は熱伝導性の高いものが相応しいでしょう。 そして、その後の98度を保つためには、火力を調整できて、 内釜の保温性の良いものが相応しくなります。
そこで、只今の電気炊飯器市場では、マイコン式とIH式なるものが広く出回っています。 どちらもマイコンで制御していることは同じなのですが、加熱の仕組みが違っています。 マイコン式は、内釜の底部に電熱器があり、電熱器を発熱させて内釜の底部に熱を伝えます。 いわゆるシーズヒーターと同じ仕組みです。 かたや、IH式は、内釜の周囲に磁力線を発生させて、内釜そのものを発熱させます。 電磁調理器と同じ仕組みと言えますが、内釜の底面に加えて、側面も発熱させるのが特徴的です。 そのため、早く沸騰させることができます。 ただ、そこまでの早さと火力が、美味しさにどの程度影響しているのか。 炊飯量が少なければ、マイコン式でも十分と言えるかもしれません。 また、IH式は、電磁調理器と同じように、発熱箇所が偏りやすく、 温度むらが生じやすいデメリットもあります。 しかも、炊飯時の消費電力は、マイコン式と比べると、かなり高くなります。 コストとの兼ね合いも考慮する必要があるでしょう。
そして、内釜の方ですが、早く沸騰させるためには、熱伝導性が良い素材が相応しい。 その点では、金属のもの、特にアルミや銅が重宝です。 こちらの詳細は、加熱講座「調理道具と熱の関係」を 参照下さい。しかも、板厚の薄い方が、ダイレクトに熱は伝わり早く沸騰します。 ただ、薄いと温度むらは生じやすい。 続いて、相反するのですが、次の段階では、保温性が問われます。 保温性が良いと言う点では、金属よりも土鍋などの陶器が相応しくなります。 また、できるだけ板厚の厚い方が蓄熱性が良くなります。 加えて、内釜の容量が大きいほど、一旦温まれば冷めにくくなります。 まとめますと、熱伝導性と保温性の両面で優れるバランスが大切になるのです。 しかも、内釜の場合は、お手入れも想定されますので、厚くて重くても扱いづらくなります。 基本は、ガスコンロ等で炊飯するお鍋と同様で、やや厚めのアルミのものが、 軽くて扱いやすく家庭用では基本だと思います。
さて、最近では、IH圧力式なるものを見かけるようになりました。かなりの高額です。 IH式に、圧力が加わります。 こちらは圧力鍋と基本的な仕組みは同じですので、こちらの詳細は、 加熱講座「圧力鍋の実像」を参考にしてみて下さい。 圧力をかけることにより、100度以上の高温を使うことになります。 ただ、炊飯(厳密には白米炊飯)は、98度の温度ですから、もともと100度以上の温度は必要ありません。 かえって、100度以上となると、美味しさや食材を壊してしまう要素もあります。 なお、玄米のような硬いものは100度以上の高温は相応しいのですが、 白米炊飯では通常は必要ありません。 圧力鍋で白米炊飯すると、もちもちとした柔らかい仕上がりになりますが、 一般的にはそこまでの柔らかさを好む方は少ないのが実状です。 さらに、圧力をかけることで、音が出たり、蓋をしっかり密閉させますので、 蓋の開閉がしづらかったり、構造上複雑になるので、お手入れに手間がかかります。 かたや、玄米炊飯にはおすすめできるでしょう。
炊飯の仕組みを理解しないまま購入してしまうと、 金額に見合った価値を感じることができないかもしれません。 その意味では、まずは、お鍋で炊飯することを通じて、 炊飯の仕組みを理解してみると良いでしょう。 今日の電気炊飯器は、メーカーの努力により、日本が誇れる商品になっているのかもしれません。 しかし、それを使うユーザーが、お料理をスイッチ一つでできるものと錯覚してしまうことは、 思考停止に陥り、考えると言うお料理の本質からも外れてしまいます。 お買物でも然りでしょう。美味しさを機械任せ、他人任せにしない。 人間には知性と感性そして意志が与えられています。 それらを生かすことが、美味しさに、すなわち幸せに通じるのだと思います。 その意味では、まずはごはん鍋のページの お鍋で炊飯することをおすすめいたします。