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道具選びの眼

2012年3月30日

比較研究 鋳鉄のフライパン

リバーライトの極シリーズも含めて 国内大手製鉄会社の鋼板(こうはん)を使用しています。鋼板とは、もともとコイルになっていまして、これを切断加工して鉄フライパンとなります。 なお、鋼板は、Fe(鉄)が100%ではなく、さまざまな成分を含む合金でもあります。

専門的には、冷間圧延(れいかんあつえん)鋼板と呼ばれ、複数のローラー等の間に通して、圧力をかけて延ばして製造されます。 ちなみに、冷間とは、常温の場合もありますが、熱間(ねっかん)より低い温度にした状態を指します。 熱間とは、金属を元の柔らかさに戻す(再結晶化させる)温度以上にした状態で、鉄であれば約400度以上となります。 いわゆる鉄フライパンとは、このような鋼板を加工して製造されたものです。

そして、もう一つの鉄フライパンがあります。それが、鋳鉄(ちゅうてつ)フライパンです。 ですから、鉄フライパンには、鋼板フライパンと鋳鉄フライパンの2種類があります。 この鋳鉄を採用しているのが当社定番では、南部鉄器の柳宗理ミニパンになります。

ここで、鋼板と鋳鉄の違いを整理します。 まず、製鉄会社で行っている製鉄の過程に目を留めてみましょう。原料は鉄鉱石となります。 これを溶鉱炉で還元した鉄が、銑鉄(せんてつ)です。 ごく簡単には、鉄鉱石の酸化鉄から酸素を除去した鉄とも言えます。 その銑鉄の炭素量を下げるなどの処理をして出来上がるのが鋼(はがね)であり、それを板状にしたものが鋼板です。 また、この銑鉄を一旦溶かして、型に流し込んで出来上がるのが鋳鉄です。 英語では、鋼板をsteel、鋳鉄をcast ironと呼んでいます。 その意味では、銑鉄はironに当たります。

さて、この鋳鉄ですが、鋼板に比べると、炭素量が多くなります。 そのため、もろい点などがありますが、製造方法によって強靭なものもできるようになりました。 しかも、型があれば、どのような形にもなるので、加工性に大変優れています。 調理の上でも、鋳鉄表面の炭素の粒が、水分や油分を浸透させるため、油馴染みが良いのが特徴です。

かたや、鋼板は、空焼き等で形成させる酸化被膜のミクロンレベルの凸凹によって油馴染みが良くなります。 どちらも油馴染みは良いのですが、構造的には違います。 加えて、蓄熱性にも大変優れているので、じっくりと穏やかに加熱することができます。 このゆっくり加熱は、焼く調理においては、食材が硬くならず美味しさにつながります。 予熱にはやや時間はかかりますが、一旦温まれば、フライパン全体を均一な温度にすることができます。 ですから、アウトドアでダッチオーブンなどの鋳鉄鍋が使用されるのも理のあることです。

しかし、この鋳鉄の道具が、一般家庭で広がらないのは、調理面では優秀であっても、 重くなる操作性とメンテナンス性のゆえだと思います。 そこで、今回は、調理面を優先しつつ、デメリット面を前向きにとらえてみます。 重さの面では、重さがあるからこそ、たっぷりと鍋内に熱を溜めて美味しく調理できるのだと理解します。

20cmなどの小さいサイズのものであれば、それほど気にならないでしょう。 腕力のある男性使いであれば問題ないかもしれません。 また、日常用としてではなく焼き物専用と位置づけても良いでしょう。 極 厚板フライパンと同様に、 餃子・ハンバーグ・ステーキなどに特化して格別な美味しさを楽しみます。

また、メンテナンスは、基本的には良い習慣を身につけてしまうことです。 具体的には、汚れを除去した後、一旦コンロに置いて水分を飛ばして、 それから食用油を塗布して保管いただきます。 お鍋などは、新聞紙を詰めて湿気を吸い込ませるとより良いでしょう。 また、ゴシゴシ磨くと錆びやすくなります。

鋳鉄フライパンの説明書などでは、洗剤を使用したり、金属タワシなどで磨くことを控えるよう記載されています。 頑固な汚れの時は、一旦鍋内でお湯を沸かして、焦げ付きをふやかして除去いただくスタイルとなります。 かたや、リバーライトの鋼板フライパンなどは、洗剤や金属タワシ等を禁じてはいませんので、 より簡単にお手入れができるかもしれません。 しかも、極シリーズはほぼ錆びませんので、 汚れを落として拭き上げれば完結しますので、お手入れは大変楽になります。 それでも、鋳鉄フライパンの手間暇は、マイフライパンとして愛着が湧くものとして楽しめます。