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精読「食道楽」春の巻

第三十二 料理の原則

家庭の経済は原料の廉(やす)き品物を蒐(あつ)めて味佳(よ)き料理を作るにあり。 客の小山一々感心し「このビフテキの側(そば)にあるキントンのようなものは大層美味(うま)いが何だね」 主人「それはジャガ薯(いも)のマッシといってよく湯煮(ゆで)たジャガ薯を裏漉(うらご)しにして牛乳を加えて塩と砂糖で味をつけたのだ。 ビフテキには是非ジャガ薯を添えなければならん。ビフテキは中が生焼(なまやけ)で截(き)ると血が出る位だから 牛肉中に潜伏(せんぷく)する真田虫(さなだむし)の原虫がよく死なん。そこでジャガ薯を一所に食べるとその虫が死ぬという事だ」

客「そういう訳で薯を添えるのか。僕は野菜ならば何でもいいと思ったがジャガ薯に限るね」 主人「牛肉の血を絞(しぼ)って肉漿(にくしょう)にする時にも必ずジャガ薯を食べるのはその訳だ。 君今度の御馳走は長崎有名の角煮(かくに)だからよく味ってくれ給え」 客「色々御馳走が出来るね」主人「品数は多いがその代り分量が少いよ。いくらでも食べられるだろう。 西洋人の家で御馳走になってみ給え、品数が多くって分量の少いことお雛様(ひなさま)のお膳の如し。 それにビフテキでもシチュウでも肉が少くって野菜が多い。 日本の西洋料理屋ではお客が日本風の暴食連だから肉の分量が少いと小言(こごと)を言う。 だから肉沢山の西洋料理が出来る。こんな野蛮的の西洋料理は亜米利加へ往(い)っても欧羅巴へ往っても見られんそうだ。 魯西亜(ろしあ)料理のスープへ骨まで盛って来る処が少し野蛮じみて日本風に似ているかもしれない。

西洋料理の原則は生理学上から割出してある。 働く人と働かぬ人と夏と冬とは少しずつ違うけれども種々いろいろな点を平均した その標準は体量五十基瓦(きろぐらむ)即ち十三貫目余の人は一日に二千カロリー、 十九貫目の人は三千カロリーの食物を取らねばならぬとしてある。 カロリーは君も知っての通り熱量の単位で食物が体温を保持する割合から定めたものだ。 大きな鶏卵(けいらん)一個は八十カロリーだから鶏卵ばかり食べるなら十三貫目の人は一日に二十五を要する。 十九貫目の人は三十七を要する。しかしそれでは人体に必要なる化学成分が不適当だ。 食物の成分として十九貫目の人は一日に蛋白質(たんぱくしつ)百十八瓦(ぐらむ)即ちおよそ三十匁(もんめ)、 脂肪が五十六瓦即ち十四匁、含水炭素が五百瓦即ち百二十匁にその余は水分とこう極(き)めてある。 日本人は通常十三貫目位の平均だから一日に蛋白質二十匁脂肪九匁含水炭素八十匁位が適当だ。 蛋白質と脂肪は重(おも)に肉や乳にあって含水炭素は野菜や穀物にあるから 肉と野菜の分量もその割合で定めなければならん。

日本風の西洋料理でビフテキ一皿といったら殆ど西洋の三人前は肉があるね。 それだから多く食べられん。僕の家のは何でも少しずつだから残らず食べられる。 その角煮というのはね、先ず略式(りゃくしき)で話そうか。 豚の三枚肉を杉箸(すぎばし)が通るほどに湯煮(ゆで)て一寸四角に切って水一升に酒一合味淋(みりん)一合位な割で 五時間ほどよく煮て火から卸す一時間も前に醤油を多く入れて煮詰につめるのだ。 肉が箸で自由にちぎれなければ角煮の価値はない。悪い食物で飼った豚は白い処が溶て赤い処が硬(こわ)くなって角煮にならん。 最上等の豚でなければこういう風によく出来ない。側に溶芥子(ときがらし)が添えてある、それをつけて食べ給え」 客「ウーム不思議だ。頬が落ちはせんか。少し不用心になったぜ」とこれもなかなかの食道楽。

注釈:
○ジャガ芋は一時間位よく湯煮(ゆで)てその湯をこぼしたる時直ちにバターを入れ芋を転がしながら暫く火の上にて炒り付けたるもよし。 また日本風に塩と砂糖にて煮たるもよし。ジャガ芋は甲州産を良しとす。
○医学博士ケルネル氏は日本人のために日本風の献立表を蛋白質と脂肪と含水炭素の割合にて左の如く定められたり。 即ち強壮なる男子の食物は、一日に飯米およそ四合、沢庵七切、朝の副食物が味噌汁へ小さき蕪菁(かぶ)の実三個を入れたるものと煮豆が小皿一杯、 昼食が小さき八つ頭芋一個と蓮根が長さ三寸ほど、慈姑(くわい)が六個の煮たるもの、 晩が牛肉のスキ焼五十匁葱一本とつく薯のすりたるもの中皿一杯。 これにて蛋白質が二十二匁ほど、脂肪が六匁ほど、含水炭素が百十匁ほどとなる。強壮なる男子にてもこれ以上を食するは過分なり。
○ジャガ薯は蛋白質二分三厘、脂肪三厘、含水炭素二割あり。
○肉漿とは牛の血肉と称する処を肉絞り器械にて絞りその血を強壮剤として飲むなり。病後の快復期あるいは虚弱の人に最も功あり。
○肉漿を作る時は先ず血肉を極めて薄く截り、寄生虫類を殺すため鉄網の上にて両面を少しく焼き、 熱き内に手早く器械に入れて一つ一つ絞るなり。上等の血肉なれば一斤より一合余を得べし。 これに塩を加え、牛乳を交えて飲むべし。また少しく湯煎にして温め飲むもよし。
○血肉は一斤弐十八銭、肉絞器械は上等にて六円五十銭なり。
○牛肉の血の紅き色は多く鉄分なり。菓物の紅き色桃杏イチゴ等は皆な多く鉄分なり。故に人体に功あり。

コメント:
カロリーとは、摂取する食物から得られる栄養学的熱量と、運動や基礎代謝によって消費される熱量のことです。 すでに、この時代に科学的な着眼をもって食物を摂取することをすすめています。 そして、摂取する量と消費される量が釣り合えば、体重は保たれます。 この時代のカロリーは、今日のキロカロリーと同じとなりますので、 体重50sの人で2000カロリーとありますが、2000キロカロリーのこととなります。 その目安は、今日の成人女性と同じで、ほぼ今日と同じ指標です。 そして、三大栄養素の蛋白質、脂質、含水炭素こと炭水化物に分けて考えています。 今日の厚生労働省では、「日本人の食事摂取基準」として 蛋白質:13〜20%、脂質:20〜30%、炭水化物:50〜65%を大まかな目安として示していますが、 その栄養バランスをとる着眼も同じです。