2017年6月22日
道具があってこそのキッチン
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アンドプレミアム2017年7月号「キッチンと道具。」(マガジンハウス)
最近嬉しいことは、料理道具の特集をしてくれる生活雑誌が増えて来たことです。
やはり、キッチンという空間は、道具があってこそ、生きたものとなります。
今回は18名の方々のキッチンを取材されていますが、
そこで使われている道具に焦点をあてているので、キッチンそのものも生きたものとして伝わって参ります。
今までは、道具は棚や引出しの中に隠されてしまうことが多かったのですが、
それでは見た目は良くても、生活感なるもの、リアルなものが伝わってこない。
最初に登場する音楽家のオライビさんのキッチンでは、吊るされたフライパンが印象的でした。
吊るされているので、さっと取り出せて、さっと収納もできる。
それは、毎日フライパンを愛用しているのだと想像もできます。
その意味でも、常に使う道具を選ぶことが大切でしょう。
また、吊るすことで、風通しもよくなり、道具の状態もよくなります。
引出し等にしまいこめば、錆等が生じやすくなる。
さらに、見えないところに置いてしまうと、いつの間にか道具の存在を忘れてしまう。
今回登場する皆さんは、道具に対する思い入れが強い。
すると、どんなキッチンになるのか。
その点では、使いまわしの良い、実用的なキッチンへの提案でもありました。
台所とは、人に見せる要素もありますが、
基本は調理をするところであると気づかされます。
その時に、いかに道具と向き合うか。
そこに、調理のしやすさ、キッチンの使い心地につながっていくのだと思いました。
その点で、キッチンを使いこなしている人は、道具を大切にしている人とも言えるでしょう。
布作家の早川ユミさんのキッチンで締められていました。
「私がふだん愛用する道具は、人から受け継いだものや
旅をする中で出会ったものがほとんど。・・・・物だけどただの物ではない。」
「人が使っていたものは、その人が使っていた時間に想いを馳せることができて、
道具に対する愛着がより湧いてくるんです。そんな、使い込まれた道具に励まされ、
また今日も何か作ろう、と手が動くんです。」
布と関わるお仕事を通じて、布から教えていただいている方だなと思いました。
キッチンで道具が大切にされていれば、その空間は生きた空間となり躍動して、
美味しさが必然と作られていくのでしょう。
18名のキッチンを通じて、もう一度、私と道具との関係性を見直してみる機会としたいです。