早稲田大学理工学部の教授であった小林寛(ひろし)さんが開発した
円筒形のスカートをはかせた「はかせ鍋」は、適温調理を推奨しています。
お料理は、その食材の適温(最適な温度)で調理することで美味しくなる。
そこで、小林さんは、実験に実験を繰り返して、食材ごとの適温と加熱時間をつきとめます。
その時に、記録をとることの重要性も語っています。
ただ、このお鍋は製造終了となっていますが、今日も料理の科学を学ぶことができます。
今や幻のはかせ鍋は、沸騰後に火を止めて、スカートをはかせることにより、
1時間後でも80度弱を維持できる設計となっています。
はかせ鍋の説明書では「多くの料理は、85〜90度で20分以上おけば完全に火が通ります。
ただし、豆や米などの穀類は98度以上でかなりの時間煮る必要があります。」
すなわち、穀類を除くほとんどの料理は、100度未満。
なお、油を使う焼く、炒める、揚げる調理では、表面のみは180度でカリッと焼き固めますが、
その内部は同じく75度前後の温度が適温となります。
ステーキなども、内部は固めず、肉汁が滴るジューシーな仕上がりが理想です。
さて、食材ごとに適温と調理時間は違いますので、食材が混在している場合は、
最終的に同じ時間に仕上がるように工夫します。
また、同じ食材は、同じサイズに切り揃えます。
小林さんによると、寸法が2倍になれば、熱の通りに要する時間は、その2乗で4倍かかる。
熱を通りやすくするためには、小さく薄く切ることです。
魚一匹丸ごとに熱を加わえる場合、中央部は肉厚があり時間がかかりますが、
頭や尾は肉厚がないので、比較的すぐに火が通ります。
また、焼き物と同じように、大きなものや厚みのあるものは、表面温度と内部温度を分けて考えます。
表面は早く火が通り、内部は火が通りにくくなります。
内部まで火を通すためには、弱火でゆっくりと温める。この時、「はかせ鍋」なら火を止めて調理します。
また、厚手鍋の理も分かります。かたや、強火で沸騰させ続けると、芯まで熱が通った時には、
表面は加熱が過ぎて、煮崩れのような状態となります。
このように、料理とは、適温を主眼に加熱することです。