
「アルミはアルツハイマー病と関連がある。」 1996年3月15日、毎日新聞朝刊で報道がありました。 ここで、今日30年以上経過して一般的な常識となっているアルミ製調理器具の安全性を整理してみます。 主に厚生労働省や国際機関などの公的な立場からの情報を手掛かりにしてみます。 これを通じて、食に関わる調理道具全般の安全性を考えるきっかけにして頂ければ幸いです。
中尾アルミ製作所のアルミ製調理道具
まず、アルミは、食品中にも含まれます。 比率的に多いのは、貝類・海藻類・大豆・ごま類です。飲料水にも含まれます。また、食品添加物に含まれることがあります。そして、体内に入った場合ですが、そのほとんど(99%)は、体内に吸収されずに排泄されます。 アルミは、毎日摂取されていて、 しかも、体内に入っても、そのほとんどは体外に排泄されています。
1996年に風評が起こってしまったものの、現時点では、アルミがアルツハイマー病と関連があるという明確な根拠はありません。 国連の世界保健機構(WHO)のEHC(環境保健基準)では 「アルツハイマー病の発症とアルミニウムの因果関係は完全に否定はできないが、アルミニウムの摂取が原因でアルツハイマー病が発症するという根拠もない」と報告しています。
リスクを考える場合には、摂取量を見る視点が重要です。こちらのページに詳細がございます。生涯とり続けても影響のない許容摂取量が設定されています。例えば、体重50sの人の場合は、1日当たり14.3rとなります。それに対して、お鍋等の調理道具で溶出されるアルミは、1日当たり1.68mg(国立医薬品食品衛生研究所主体の研究試算値)ごくわずかなものとなります。
加えて、アルミは腐食しやすい性質があります。 酸やアルカリ成分に反応しやすいので、保存には適していません。 反応すれば、アルミは溶出します。 ですから、酸やアルカリ成分の強い食材は避けた方が良いですし、調理後は何かに移し替えて頂きます。そのまま保存しないように気を付けます。この適切な使い方をしていれば、アルミの溶出は少なくなります。
そして、リスクばかりではなく、そのお鍋の使い心地や結果としてできる調理という メリットの方にも、もっと目をむける必要があると思います。 その点で、アルミには魅力があるのです。 まずは、軽くて扱いやすくなること。加熱の面では、熱伝導性に優れていること。さらに風味を損なわない。プロ職人はアルミ製調理道具が手放せないのです。
アルツハイマー病や健康のことを広い視野で考えるのなら、 考えるべきことが他にあるとも思います。 喫煙や不規則な食生活などは典型的な危険因子です。 かたや、調理が楽しく、結果として美味しいとは、大変価値のあることだと思います。 現時点では、アルミ製調理道具を使って、楽しく美味しく調理ができるのであれば、非常に健康的です。
そして、大切なことは、情報を鵜呑みにせず、自分で考えることです。あるいは、冷静になって少し手間暇を掛けて確認してみる。この自分で考えるプロセスがなければ、情報が錯綜する時代に、今後もさまざまな風評に翻弄されてしまいます。お料理の基本とは、自分の頭で考えること、自分の手で作ることです。それは、調理道具全般の安全性に直結していました。
以下のパンフレット、分かりやすく整理されていますので、お役立て下さい。
「アルミニウムと健康」(簡易版 PDF)
「アルミニウムと健康」(詳細版 PDF)
今回参考にしたページのリンクをご紹介します。
アルミニウムに関する情報(厚生労働省)
アルミニウム(国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所)
アルミニウムと健康(日本アルミニウム協会)





































































