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代表者のエッセイ

2018年1月20日

阪神大震災とクックパルの想い出

23年目を迎えた阪神大震災の追悼の集りが豊橋駅前でありました。 高校生たちが、夕闇の中でろうそくを灯して、「絆」の文字が浮かんでいました。 発生時刻から12時間後の17時46分に黙祷をささげました。 追悼を通じて思い出したのが、 クックパルのお鍋を製造されていた 吉川正芳さん通称ミスターの生き様でした。

震災が起こった当時、ミスターは、すぐに購入者名簿を調べて、被災地の方に鍋を無償で送りました。 その数は150。御礼の手紙が届き、私もその手紙を見せて頂きました。 その後ミスターは、お亡くなりなり、残念ながら、復活したクックパルのお鍋も再度、 廃止商品となってしまいました。

改めて今日、物を作ること、物を売ることをミスターが教えてくれているように思いました。 日本の物作り、日本の小売りはどこに向っているのか。 グローバル化や情報化の波に翻弄されて、目的地を見失っていないだろうか。 通信販売も手がける当社としては、常に原点に返って参りたいものです。

当時、ミスターは売場を訪ね、時には売場に立ち、電話や葉書を通じてユーザーとの交流をはかっていました。 その中で、クックパルチームのような関係者の絆も生まれました。 私の書いた日記がきっかけで、その関係者が集り、日本橋高島屋前にある「ざくろ」というお店で席をもったことも懐かしいです。

また、ミスターが、私の日記の写しをあるユーザーの方にも送られて、 それがきっかけで、当社の顧客となって下さった方がいます。 それ以来、折あるごとにお買物をいただいて、今月もお電話を頂き、ミスターのことを偲びました。 こんな交流を残してくれたのも、ミスターだったのだと分かって参ります。

私もまた、ミスターのように、一人一人のお客様と直接語り、全国を駆け回りたいと思います。 そこにできる絆、信頼こそ、商売の目的そのものでもあるでしょう。 いつしか、そのことを忘れて、商品だけを動かしていることに明け暮れてしまっていないか。 自戒して参りたいですし、原点に立ち返って行きたいです。

23年目の追悼の集りでは、不思議な体験をいたしました。 その日は猛烈な雨が降っていましたが、始まる前には、雨が一時的に止んで風もなく、 ろうそくの火は消えることはありませんでした。 そして、鎮魂の太鼓と笛の音が響いた後に解散すると、また雨が降り始めたのです。

天は見ているのだと思い、ミスターも、私の商売を見てくれているように感じました。 ありし日のミスターを思い出しながら、それを手がかりとして参りたいです。 丁寧に作るメーカーと手を携えて、丁寧に販売して行く。 その中で新たな絆を作り深める。それがフライパン倶楽部の真骨頂です。