日野原重明さんのご逝去にあたり、謹んでお悔やみ申し上げます。 改めて、日野原さんの足跡を今日顧みたいと思います。 まずは、成人病を生活習慣病と改名したことです。 かつて成人病は、加齢によって発病されると考えられて命名されました。 しかし、生活習慣を改善することで予防できるのだから生活習慣病と呼ぶことを提唱します。 1996年ごろには、当時の厚生省はそれを採用します。 そこには、人々の健康を願う医師・日野原さんの強い意思を感じます。 その結果、病気予防への機運が高まり、生涯健康への足がかりとなったことでしょう。
その生活習慣の中でも、食べることについて語られたことを整理してみます。 何を食べるかと言うよりも、飽食の時代には、腹八分目を教えていたように思います。 それが、少食でもありますが、1日3度という回数にこだわらず、1日のトータルで考えれば良いと言われています。 ご自身も、お昼は一杯の牛乳とビスケットだけで、 自分にあった量を自分の体調に聞きながら知ることが大切なのだと。 もちろん、食べ盛りのころは沢山食べて、年齢とともに量はへっていく。 本質的なところでは、自分の身体にあったものを自分で考えることを教えていたように思います。
日野原さんは、ご自分の身体に合った食べ方を考えていたのだと思います。
また、昔の人がしばしば言われていましたが、よく噛むことをすすめていました。 よく噛むと、消化吸収が高まるだけではなく、脳が活性化するとのこと。 あごの筋肉を動かすと脳の血行が良くなって、頭の働きがよくなる仕組み。 また、満腹中枢を刺激するので、先ほどの少食、食べ過ぎないことにもつながります。 加えて、楽しんで食べることを推奨していました。 この時代に、最も必要なことかもしれません。 そのためには、一人ではなく家族をはじめ誰かと食べることも大切でしょう。 あるいは、自分で作ることで楽しむことはできるのかもしれません。
そして、日野原さんと言えば、朝食にオリーブオイルを飲んでいました。 野菜や果物のジュースに、オリーブオイルを茶さじ1杯(約4グラム)注いで飲むことを習慣とされていました。 もともとは、動脈硬化や心筋梗塞などを誘発する可能性が高いと言われるコレステロール値を下げるためだったとのこと。 そこで、オリーブオイルには、善玉コレステロールはそのままに、悪玉だけを減らす効果があることを知り、 その食習慣は、30年以上続いていると当時言われていました。 また、その食習慣を例に出しては、医師と薬に頼り過ぎないように諭されていました。
良質なエキストラバージンオイルが、ありし日の日野原さんを支えていました。
並行して、油抜きでは、やせられないとも言われていました。 何でも過ぎては体に良くありませんが、適度な油を摂取することは体には良いとも言えます。 とかく、ダイエットでは、ノンオイルが叫ばれますが、一切油を摂取しないなどの極端に走ることに注意を呼び掛けていました。 ダイエットで大切なのは、野菜やタンパク質などはしっかり摂取して、減らすべきは炭水化物と糖質だと。 加えて、量と言うよりも、良質な油を選ぶことも重要で、 オリーブオイルでは、良質なエキストラバージンオイルをすすめていました。
何よりも、日々を前向きに喜びと感謝を持って生きることを教えてくれていました。 齢五十八の時に、よど号のハイジャック事件に遭遇して、今までは、自分のためだったが、今度は人のために生きるのだと決意します。 そこには、伝道者のような使命あるいはミッションを帯びていたように感じます。 日野原さんの晩年の活躍は、若い時よりも目覚ましかったかもしれません。 人のために生きるという愛こそ、実は健康になる道なのだと、 一臨床医師はその105年の生涯を通じて教えてくれたようでした。 今日も天国から優しく微笑んでくれているようです。