お湯を沸かすという単純な行為も、何で沸かすかによって味わいも違って参ります。 そこで、おすすめしたいものの一つが、鉄瓶です。 タイムスリップしますが、私たちの先人は、微妙な味の違いに敏感だったと思います。 千利休などの茶の世界でも、その味を追求していたと思いますが、 その時に使っていたのが鉄瓶でした。
鉄瓶は、南部鉄器などの鋳物鉄ですが、その厚い板厚の素材が、ゆっくりと熱を伝えます。 電子レンジのように瞬間的に温めるのとは違います。 お料理全般にも通じますが、穏やかにゆっくりと熱を伝えることは、美味しさにつながります。 科学的な裏付けはございませんが、一般的に、味がまろやかになると表現されます。
なお、南部鉄器とは、江戸時代に南部氏の領内であった南部藩(盛岡藩)で作られた鉄器であり、 17世紀中頃、南部藩主が京都から盛岡に釜師を招き、茶の湯釜をつくらせたのが始まりと言われます。 また、同じ岩手県内の奥州市(仙台藩)の鉄器も、戦後組合を県内統一するに至り、南部鉄器と呼んでいます。
鉄瓶内部に形成される白い湯垢(ゆあか)が、鉄瓶の錆を防ぐばかりか、お水をまろやかに すると言われています。この湯垢は、使い込むほどに形成されて参ります。 そのため、鉄瓶内部は、磨くことはしません。お手入れは、基本的に内部は触れず、よく乾燥させていただくのみとなります。 赤錆が生じても、そのままご利用いただきます。 なお、赤錆が広がるようでしたら、茶殻を入れて煮立て、半日ほど放置していただくと良いです。
使いはじめは、慣らし作業をしていただき、湯垢を作りやすくしていただきます。 水を8分目まで入れて、蓋を外して沸騰させます。この作業を気長に3回ほど繰り返します。 できれば、しばらくは市販されている硬水を利用されると、湯垢が形成されやすくなります。 加えて、毎日使用いただくことで状態はよくなりますので、あまり使用しない方には鉄瓶は不向きです。
鉄瓶も数ある中で、当社でおすすめするのが、岩手県奥州市にある及源(おいげん)さんのものです。 こちらの JYOジョー鉄鍋も 及源さんで作られているなど、さまざまなところと提携されて商品開発もされています。 鉄瓶は、取扱説明書が一つのポイントで、及源さんのものは分かりやすいです。 こちらのメーカーページも参照下さい。
しかも、工芸品のように高額ではなく、鉄瓶としては比較的買いやすい価格となっています。 また、デザイン性にも優れていると思います。及源さんの鉄瓶もシリーズがいくつかありますが、 その中でもシンプルで、オーソドックスと呼ぶに相応しい観月アラレが実店舗定番です。 丸い月をイメージして、南部鉄器に独特なアラレ模様が施されています。
どちらも電磁調理器(IH)にご利用いただけます。 まだまだ寒さ残りますが、温かいお茶、温かい珈琲を楽しむ上でも、 水に茶葉に珈琲豆にこだわるのであれば、水を沸かす道具も見直してみてはいかがでしょうか。 毎日のことですから、良質な道具で、美味しく水を沸かせることは、生活を豊かにしてくれます。
小ぶりなタイプで、1〜2人用となります。ツルは倒すことができます。
どっしりと重みを感じます。ツルは倒すことはできず固定されています。