小学校時代の給食の時間には、いつも用務員さんがお茶を用意してくれていました。 一クラスに一つのやかん、そこにはマジックで学年とクラスが武骨に書かれている。 その時のやかんが、黄金色の蓚酸(しゅうさん)湯沸かしでした。 今でこそあまり見かけなくなりましたが、今でも当社実店舗に並んでいます。 この道具には、郷愁というのでしょうか、何かほっとさせる懐かしさを感じさせます。 今回は、ちょっと変わった視点で、この道具をご紹介したいと思います。
アルミ製ですが、なぜ黄金色なのか。それは、アルマイト加工が施されているからです。 これは、アルミを蓚酸溶液の中に浸して、電気を流すことにより、 アルミの表面に厚い皮膜を形成させます。 この皮膜によって、酸やアルカリの成分と触れても腐食しにくい硬くて丈夫なアルミとなるのです。 このアルマイト処理は、世界に誇れる日本の技術であることをご存知でしょうか。 1929年(昭和4年)に理化学研究所で発明されて、アルマイトの名称も日本でつけられました。 今日では、サッシなどの建材、自動車の部品などにも広く使われています。
アルマイト処理で自信をもったのか、日本のアルミ素材への技術はさらに進化を遂げて行きます。 映画「風立ちぬ」また「永遠のゼロ」が話題になっていますが、当時の世界を驚かせたのが ゼロ戦と呼ばれる零式艦上戦闘機の軽くて強い機体であったと言われています。 設計者の堀越二郎は、同じく日本発の「超々ジュラルミン」というアルミの合金を採用。 こちらも、日本の技術者たちによって、アルマイト処理の延長に出来上がった画期的なものだったようです。 この軽くて強いアルミの素材によってゼロ戦が誕生しました。
軽くて強い日本が世界に誇るアルマイト処理により、
早く沸くばかりか、扱いやすく末永くお役立ていただけます。
戦前の日本の技術であったアルマイト処理と超々ジュラルミン。 戦争があのような形で終わり、ゼロ戦を開発した技術者たちの苦悩を推し測ることはできません。 しかし、台所で湯気をあげる湯沸かしに、心癒されたのかもしれません。 その湯煙は、平和への熱き祈りが立ち上っているようです。 戦後この湯沸かしは広がり、美味しい給食を食べる子供たちを見守ってきた。 日本人として、この湯沸かしを見るとほっとしてしまうのは、物づくりをされる方たちの 平和への願いが聞こえてくるゆえだったのかもしれません。
軽くて強い湯沸かしは理にかなっています。 湯を沸かすだけなら、厚さや重さは必要とされません。 かえって、厚みや重みのあるものよりも、早く沸かすことが出来ます。 底が丸くなっているので、側面への熱の伝わりも早くなります。 もちろん、軽い方が扱いやすい。水をたっぷり入れても重さを感じにくい。 しかも、強度があれば、末永く使用できます。 ゼロ戦に搭乗して大切な人たちを守ろうとした人を忘れてしまったように、 この湯沸かしを忘れてしまうのは残念なことです。
こちらの商品は、実店舗のみの扱いとなります。