料理道具専門店 フライパン倶楽部

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道具選びの眼

2009年1月17日

比較研究 大根おろし

ご年配のお客様が、なにげなく「大根おろしは、銅のおろし金だよなあ〜。」とポツリ。 小林カツ代さんの今はなき、ネット付大根おろしから始まり、 オクソの大根おろしなど、 フライパン倶楽部では、おろしやすさばかりに今まで目が向いていました。 食感やおいしさのことは想定外。 お料理道具店としては、お恥ずかしいことですが。 極端な例ですが、フードプロセッサーで大根もおろせますが、 やはり水っぽく、食感が違うことは、はっきり分ります。 それは、おろすというよりも、潰すに近い感じかもしれません。 日本の繊細な食文化のひとつが、どうやらこの「おろす」という調理のようにも思えてきました。 このような繊細な味の違いにこそ、もっと敏感になりたいものです。果たして、本来のおろすとは。

今回ご紹介するのは、実店舗定番の大矢製作所さんの本目立銅ハイスピードおろしです。 和田商店さんのステンレスものと オクソの樹脂のもので比較してみました。 どれも、おろしやすいのですが、気持ち和田商店さんのものが、一番おろしやすい印象でした。 そして、仕上がりを、写真撮影してみました。下の写真を参照下さい。

仕上がり面と味のおすすめは、大矢さんのものでした。 「甘さ」がより感じられ、ふんわりとした食感。 見た目も「淡雪」という表現に近い美しいものでした。 これを本来は「大根おろし」と呼ぶのかなあと思いました。

和田さんのものは、比較的に粕が残る感じでした。 気にならない方は、全然気にならないレベルだと思いますが。 オクソもやや粕が入り、水切りがない分やや水っぽい感じがします。 同じ大根なのですが、色合いも大矢さんのものが白かったです。 オクソのものはやや緑っぽさがありました。大根の部分もあったかもしれませんが。

大矢製作所 本目立銅ハイスピードおろしでおろしたもの

オクソ大根おろしでおろしたもの

和田商店プロおろしでおろしたもの

そこで、大矢さんの魅力を考えてみました。 樹脂製のものは、素材が柔らかく、鋭さがない。 鋭い方が、繊維を壊さず、おいしくおろせるようです。ただ、扱いには注意が必要です。

加えて、大矢さんの銅は、厚手の銅を叩き締めて、目立てていますので 刃がより鋭利になります。刃物もやはり、地金を叩き締めて鍛える方が良いようです。 その点では、重くなりますが。しかし、受け皿付きなので、 おろす時には、重さは関係ありません。

そして、タガネを使って、一つ一つ手作業で目立てています。 また、刃がなくなったら、目立て直しをしているのが、大矢さんの最大の特徴です。 使い捨ての時代、このようなメーカーが少なくなりました。 目立て直しは、大矢さんで直接受付しています。(片道送料負担で、修理費は本日現在¥4987です。)

やや高額にはなりますが、商品に対する愛着は増すでしょうし、地球環境にも優しいです。 業務使いで1回に10年もつと言われていますので、家庭用なら、もっと長く使用できるでしょう。 なお、こちらの受皿タイプは、目立て直しは1回のみ可能です。

さらに、羽子板のような形をしたおろし金とは違い、受皿が付いていますので、力が入りやすく、おろしやすいです。 また、こちらも水切りが付いていますので、適度に水切りをしてくれて、しっとりと仕上げます。 そして、同じ銅でも、機械で目立てている銅おろし金も使ってみました。 こちらは、目が均一なので、同じ方向に動かしていると、 溝ができてしまい、ある時点で、回すなど違った方向に動かす必要がでてきます。

その点、大矢さんのは不揃いですが、同じ方向で最後までおろすことができます。 それが、美しく仕上がる要素なのかもしれません。 ステンレスのおろし金も、やはり機械での均一な目立てでもあり、もちろん、目立て直しはできません。 大矢さんのものは、ランダムであっても、目の深さや間隔なども含め、すべて計算されているようです。 そこに、大根おろしの美学を感じました。それこそが、職人魂なのでしょう。

また、こちらの商品を使う時には、ちょっとした道具ですが、左の竹製スクレパーが重宝です。 目と目の間のものや、おろし金に残ったものをよせる時に、手を傷つけません。 また、受皿に落ちたものをよせるにも有効です。 他の目の細かいおろし金などで、生姜やワサビなどの薬味をよせるにもお役立ていただけます。 さて、右の写真は、よ〜く見ると、一つ一つ目が違うのです。 「プロが選んだ調理道具」(平凡社 笠井一子著)で大矢さんのことが紹介されていました。 「とにかくきれいで見栄えがよく一律同じものでなければデパートなんぞへ卸せない。 とかく、素人は『本質とは無関係なところでこだわっちゃうんでね。』」と大矢談が記載されていました。

Kan竹製おろし金スクレーパー