台所では、どんな音が響いていますか。
その音で、どんなお料理が作られているかが分かるのかもしれません。
台所の音とは、作り手の心が表れるのでしょう。
あわてている時には、あわてている音が聞こえてきます。
丁寧に扱っている時には、丁寧な音が聞こえてきます。
そこで、昔の台所では、しばしば聞かれた音が、リズミカルなまな板の音です。
その心地良い音は食欲を増進させて、食べる備えをしてくれていたようです。
この音が、いつしか途絶えていないでしょうか。
そのまな板の多くは、厚みのある一枚板でできた木製のものです。
薄いものは、軽くて扱いやすいのですが、厚みのあるものは動かず安定感があり、
しかも、良い音を響かせてくれます。
そして、木製もいろいろですが、昔から選ばれているものの一つがいちょうです。
硬さがほどよいために、包丁の刃当たりが良く、包丁の刃を傷めません。
また、復元力があるために、まな板の方も傷つきにくく末永く使用いただけます。
この硬さと厚みが絶妙で、そこに心地良い音が作られるのだと思います。

両面とも水で濡らして、布で拭き取ってから使って下さい。
肉や魚料理の後は、塩またはクレンザーをふりかけ、タワシでよく洗い、ぬるま湯ですすぎ、
よく拭いてまな板を立てて乾かしていただきます。
いちょうは、将棋盤にも使われますが、反りにくいところも特徴となります。
木が反ってしまうと、大変切りにくくなります。
まな板にとって、反らずに、常に平面であることは重要です。その点でも、いちょうはおすすめできます。
さらに、油分を含み、水はけも良いので、乾燥も早く黒ずみににくくなります。
加えて、木肌の色合いが美しく、食材が調理される場所としても相応しく、美味しさにもつながるでしょう。
なお、いちょうには、独特の臭いがあります。
使い込んでいただくことで、しだいに臭いも感じなくなりますが、
かえって、食材の臭いはつきにくいです。
今回ご紹介するいちょうのまな板は、松田美智子さんの自在シリーズのまな板で、製造は福井県の双葉商店となります。
「このまな板は、永平寺で有名な越前の雪深い山奥から切り出されたいちょうの一枚板で作られています。」
日本唯一のいちょう材専門店とのことで、福井県の郷土工芸品にも指定されているとのこと。
専門店の確かな目で木が選定されて、確かな技で加工された本物志向の商品です。
そして、このまな板から響く音が、作り手の心を整えるばかりか、感性と知性に働きかけてくれる要素もありそうです。
今日の台所では、どんな音が響いているでしょうか。耳をすませてみて下さい。