料理道具専門店 フライパン倶楽部

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精読「食道楽」春の巻

第十七 お不在(るす)

心を籠(こ)めし贈物(おくりもの)は書生の悪戯(いたずら)に成りしとも知らず、 大原満は奉書の包紙が皺(しわ)にならぬよう、かけたる水引が揉(も)まれぬようと後生大事(ごしょうだいじ)に 大なる風呂敷へ包み、歩いても近き場所なるを贈物が大切とて車を雇い、 心には天晴(あっぱ)れお登和嬢を悦ばせんと期して急ぎ中川の家へ赴(おもむ)きたり。

門に入りて窃(ひそか)に窺(うかが)う家内の様子 「ハテナ、今日はお登和さんの声がしないぞ、何処(どこ)へか往(いっ)たかしらん。 イヤ外(ほか)へ往(ゆ)く所もあるまい、台所にいるだろう」と頻(しきり)に気が揉める。 主人の中川は狭き家とて人力車の門前に停(とど)まりたるを知り、如何なる客が来りけんと自ら立出(たちい)でて 格子戸を開き「ナンダ大原君か、何故(なぜ)台所を覗(のぞ)いている。早く入らんか」

大原漸(ようや)く内に入(いり)て座敷へ通り「中川君、昨日(きのう)は大きに御馳走だった。時にお登和さんは」 主人「今不在(るす)だ」大原「オヤオヤ何処へお出掛だね」主人「今日は小山君の所へ年始に遣(や)った」 大原「それは残念」と失望顔。主人も不審に思い「何か妹に用でもあるのか」大原「イイヤそうではないが僕は昨日のお礼に お登和さんの所へ土産物(みやげもの)を持って来た」 主人「土産物を。それはお気の毒だね、そんな心配は要(い)らんのに。僕が預かっておこう」 大原「イヤ、小山君の処(ところ)なら僕も小山君の家へ往く用があるから向うで差上げよう」 と自分では手渡しにせんつもり。

主人の中川も大原の様子が平生(へいぜい)に異(ことな)れるを知り 「大原君、君もいつの間にか大層変化したね。人に土産物を贈るなぞとよくそんな事へ気が付くようになったね。全体何を妹にくれるのだ」 大原「半襟だ」主人おかしく「ウフフ君が半襟を買って来たのか、よほど妙だな。前代未聞の珍事だね。 マア遊んで居給(いたま)え、今に帰って来るかも知れない」 大原「そうさね、途中で行違いになっても残念だから待っていようか。 時に中川君、お登和さんは東京で何処へか嫁に遣るつもりか」

主人「好(よ)い口さえあれば遣りたいと思うが、しかし僕が女房を貰わない内は困る。 僕が貰ってから彼(あれ)を遣るつもりだ」] 大原「そんな事を言わないで早く遣り給え、今の内に」 主人「だってまだ貰(もら)い人(て)もない」大原「あるよ」主人「何処に」 大原「何処にでもあるがね。こういう事は機会だから機会を外すとかえって良くない」 主人「それは随分今でも好い口が出て急にくれろというなら彼(あれ)のためだから 僕の不便を忍んで遣らないとは限らん。しかしまだ東京へ来たばかりで誰にも会っていないし好い口の出るはずもない。 いずれ何処へか遣らなければならんから好い口の世話をしてもらうように今日は近づきかたがた小山君の処へ遣った。 小山君の妻君はなかなか世話好だからね」

大原「ウム、そんな迂遠(うえん)な方法を取らないでも近路(ちかみち)はいくらもある。 小山の妻君が世話をしてくれる処なら何処へでも遣るかね」主人「何処へでもとは言われんが相当な処なら」 大原「無論相当この上なしだ。マア僕もちょいと小山君の家へ往いってみよう。さようなら」 と例の大風呂敷を小腋(こわき)に抱え、劇(あわ)てて戸外(そと)へ飛出したり。 主人留めもせずして送り出し「君は何だかおかしいね」

コメント:
歩ける距離なのに、人力車まで用意をして贈物を届けようとする。 健気な大原の想いを、なぜ中川は察することができないのか。妹の結婚相手としては、想定外なのでしょうか。 あるいは、中川は、大原の気持ちが分かっているものの、はぐらかしているのか。 最後の「君は何だかおかしいね」という見送りの言葉からすると、まだ分かっておらず、鈍感ということもかもしれません。 この擦れ違いに、面白みがあるとも言えますが、往々にして人生には、このようなことがあるものです。 また、大原自身も、直言できずに、迂遠なる方法をとってしまっているように見えます。 ただ、直言できない大原の気持ちも理解できます。 こんな時は、ちょっと気を利かせた人物が周囲にいると円滑にすすむものかもしれません。 それが、世話好きと呼ばれる人たちでしょうか。