料理道具専門店 フライパン倶楽部

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未来への4つのキーワード

2000年8月にお隣浜松市の経営者の勉強会で、「インターネット通販」の 話をしていただきたいとの事でお招きいただきました。 その時の講演の内容をそのままテキストにいたしました。 基本的な考え方は、今も変わりませんので、当社のめざしているものを ご理解いただければ幸いです。

序章「インターネット通販」の背景

フライパン倶楽部では2年ほど前から(当時2000年8月)、お鍋ですとか包丁ですとか、こだわりのある調理器具をインターネット上で販売しております。去年くらいからインターネット通販とういうものが話題となってきているので、インターネット通販がどうして話題になったのかを三つほどキーワードを挙げてご説明したいと思います。 あたりまえのことかもしれませんが、まず一つは、どれも「低コスト」という言葉がつきます。

1.「低コスト」で全国に小口で配送できるようになったこと。 これは、ヤマト運輸さんのおかげですね。これがあるからインターネット通販が成立する、ということがあったと思います。 2.「低コスト」でホームページを立ち上げれるようになったこと。 商品宣伝ができる、ということですね。従来は、カタログ等の紙媒体を使った通信販売がありますが、例えば、フライパン倶楽部のページ数は全部で500頁、1500枚の画像が掲載されております。 これを月々5000円のコストでやっております。やはり、「低コスト」と言えると思います。 3.「低コスト」で代金の決済ができるようになったこと。 当社の場合は郵便振替を使っていますけど、一回1万円以上のお買い上げでも、120円の手数料しかかかりません。

この3つが重なり、インターネット通販ができあがっています。ホームページを持てさえすれば、浜松のみではなく、全国、全世界で活動できます。現在では、コンビニ決済も出てきていますし、銀行は必要のない時代がやってきているのではないかなと、個人的には思っています。 この事業を2年ほど手がけ、現在ネット通販の売上は、店頭売りを越えるような勢いを見せています。ぜひとも皆様も、これを活用してなにか新しいものを手がけてみては、と思っています。

今日は、遠州未来塾ということですが、僕も「未来」という言葉がとても好きなので、未来に向けての4つのキーワードというタイトルで、自分がインターネット通販の現場を2年間体験している中で、この4つはかなり重要ではないかな、ビジネスの中でも優先すべきではないかな、ということを皆さまと分ち合いたいと思います。決してこれが絶対というものではありませんが、こういう考えもあるのか、という見方で皆さんに受け止めていただければ、と思っています。

1.インターネット(アナログからデジタル)

現在、デジタルの代表的なものがインターネットですけど、デジタルは、中小企業が大手に対抗できる最強の武器です。このことについて、二つほど、皆様にその魅力を挙げてみたいと思います。

例えば1枚CD-ROMには、どれくらいのデータが入るか皆様ピンときますか?今回こういう講演があるということで、自分なりに計算してみましたが、CD-ROM1枚の中に400字詰め原稿用紙にして85万枚分ものデータを保存することができます。紙を500枚重ねて4.5p位として考えた場合に、このビル(プレスタワービル/浜松市)が15階ありますが、ちょうど15階に相当する、それくらいのデータが入る、ということですね。このメディアの中にはこんなにたくさんのデータが入ります。デジタルの魅力というのは、 1.情報(データ)を低コストで大量に保存できる 2.情報を低コストで瞬時に伝達できる ということが挙げられます。 携帯電話にしても、ホームページにしても、地球の裏側の情報をすぐに手に入れることができます。

次に、デジタルをビジネスの中でどのように活かせるのか?と考えた場合にですね、先ほどもお話しましたが、当社の場合は小売店ですから、 1.HPで膨大な商品カタログができる(1500写真/500頁/5000円) ということを考えれば、非常に有能な武器、ということが解るのではないかな、ということです。加えて、短時間に正確にやりとりができるということなので、 2.電子メール上でコンサルタントができる 3.電子メール上で注文のやり取りができる ということが言えるわけです。とすれば、商売の全てをホームページ(以下HP)や電子メールで管理をすることができる、ということが言えるわけですね。しかも、非常に低コストです。ですから、大手に対抗できる唯一の最強の武器を持っているんだ、ということですね。あとは、それを活かすか活かさないか、ということが言えるのだと思います。

ですから、私たちが未来に向けてデジタルをいかに上手に利用していくか、ということがビジネスの分れ道だと感じます。このことはビジネスだけでなく、どの世界でも重要なポイントではないかな、ということですね。今はもう、アナログからデジタルの0と1の時代に変わったんだ、と実感しています。

2.オンリーワン(量ではなく質)

では、デジタルの話はここまでにして、二番目のキーワードに移ります。量ではなく質ということですが、このことも、自分がインターネット通販の中で感じていることです。

よく言われることですが、ナンバーワンになるよりもオンリーワンになれと、いろいろな人からアドバイスをいただきます。いかにデジタルやインターネットが使えても、要はコンテンツ、中身なのだと。伝えるものがなければ、やはりそれは、ただの箱といいますか、なんの役目も果たさないんだということです。皆様は、それぞれビジネスの世界で鍛え上げられてきた経験ですとかノウハウをお持ちですから、そういう方であればなおのこと、インターネットを使えばうまくいく可能性が高いと思います。けど、そのようなコンテンツもなしに、ただインターネット、デジタルだけであっても、それはうまくいかないのではないかな、と個人的には思います。

 当社の顔は何なのかを問いかける

当社の場合は豊橋の駅前で、最初は高津金物店として出発しました。金物と言いましても、所謂金槌ですとか釘ですとか、大工さんが使う建築金物から、家庭で使うお鍋ですとか、結構幅広い商品を扱っていました。しかし、当社は金物店ではやっていけないということで、僕の祖父になりますけど、二代目が家庭用の金物にしぼってやっていこうと、リビングセンタータカツとして商売をしていました。そして私の父の代に、家庭用のものでも料理道具にしぼってやっていこうということで、現在のキッチンステーションタカツに至っております。

当社の歴史を見ますと、とにかく、専門特化という言葉がふさわしいでしょうか。だんだんと範囲を絞り込んでいって、当社の顔はなんなのかということを代々つくりあげていった、ということを見ることができます。これだけ様々な会社、様々なお店があり、いろいろなものが溢れている中ですから、当社はなんなのだろう、という顔、アイデンティティとも言いますが、それをまず見つけることが重要ではないかと思います。或はそれはなんなのか、ということをもう一度再確認することが大切なのではないかなと思います。その時に手がかりになるのが、歴史だと思います。

私が二年前にHPを始めたときにやはりこの歴史を振り返り、もう一度当社の顔、アイデンティティはなんなのかなと考えました。HPというのは、紙に書くように、字で表していきますよね。その書く、という作業をすると、結構整理されてくるのです。ですから当社のHPには、このような歴史も書いてあります。そして、当店はこういうコンセプトでやっています、ということも書いています。HPを立ち上げるときに僕は祖母のところに行って、当社の歴史がどうなのか、ということを聴いてですね、こういう流れがあったのかと知り、やはりこのHPも、料理道具に特化してこれにこだわってやってくんだ、ということがわかってきたわけです。 ですから、HPを作るということは、もう一度アイデンティティや顔、魅力、独自性、ということを考える上で、とても有効なものじゃないかな、と思います。そういう機会ってなかなかないですよね。

当社の場合は、品質の良い家庭用の料理道具の販売という事業領域に特化して、そして、お料理上手は幸せ上手、こういうことが言えるんじゃないかな、ということを翻って考え、これでやっていこうということで始めてみました。当店はこうなんだよ、と言える明快なコンセプトを文字で表現できる、ということが重要じゃないかな、と思います。

 目標よりも目的を明確にする

「まず目標を立てることが大切なんだ!」というふうに言うかもしれませんが、やはりHPの中では、目標よりも目的ですね。何のためにか、どういうページなのかという部分を打ち出す、意外にここの点がなおざりにされているのではないかな、ということを感じます。

当社の業種のライバルは百貨店なのですが、百貨店の最近の商売をみると、ちょっとやりかたが違うんじゃないかな、と感じることがあります。いいものというのは、お客さんとしては高いものでもありますから、ちゃんと説明を聞いてじっくり選んで買いたい商品なわけです。けども百貨店はコンビニ店やスーパーと同じように、セルフショッピングのような、ただものを置いておけばいいという、言い換えると品揃えだけで圧倒すればいいという、そういう考え方があるんじゃないかな、と思います。ちゃんと専門知識を持って、この道具はこうなんだ、この道具の違いはこうなんだということを実際に情報提供できる、それが専門店のありかたじゃないかな、と思います。

このHP上のやりとりというのは実にその点、お客さんが聞きたい点をですね、こちらから一人一人に対して、「この道具はこういう良さがあるんですよ」「こういう違いがあるんですよ」ということを、電子メールできめこまかくやりとりができるんですね。HPというと、一見一方通行のような感じがするかもしれませんが、実はそういうことを、水面下ではしているわけです。本来ならば、店頭でそういうアドバイスを頂いて然るべきなんですが、百貨店がパートさんを使っている場合は、レジ打ち等の作業はできるけども、そういうアドバイスはできない、ということがあります。メーカーの派遣社員を遣わせたりすると、客観的な情報というのはなくなり、その商品だけを売るような偏った情報になってしまうわけです。そういうことをやっていては行き詰まるのではないかなと思います。

ですからもう一度、百貨店も原点に戻って、いいものを売るんだったら一人一人にきめこまかく説明して、情報提供して売っていく、そういう質と言いますか、ただ売ればいい、というのではなくて、様々な情報をのせて売ってゆく、という時代ではないかなと思います。

戦争が終わって60年くらい経ちますが、僕が疑問に思うことは、今までは右肩上がりの時代といいますか、大量生産大量販売でやってきたので、いつも指標を前年対比でみるわけですね。もうこのような時代ではないので、営業マンの人もかわいそうだと思います。売上がずっと伸びていくということは有り得ないわけですから、ものが溢れている中で去年と比べてどうであったか、という見方はしてはまずいのではないかな、と僕は個人的に思います。もっと別の見方、それは量でなくて質という視点からものを売っていく、営業していく、というふうにしなければ大変なことじゃないかな、と思います。

 本当に満足している買物が実現できているか

ですからこれからの小売店というのは、ただたくさん売って、ただ売上を伸ばしていけばいいのではなくて、やはりお客さんに、買ってよかったな、という満足感や、間違いのない買い物だった、と思わせる、そういう商売をやっていくべきじゃないかな、と思うわけです。小売店とは間違った買い物をさせない店であると、小売店とは物を売る店ではなく、満足したものを売る店であるんだ、ということであれば、まだまだ隙間もありますし、まだまだやる仕事はたくさんあると思います。結構皆様間違った情報で間違った買い物をしてる方が多いと思うんですね。

そういう中で、いかに正確に、いかに本当に満足した買い物ができるか、ということが小売店にこれから問われてくる、そういう質の時代に今はなっているのではないかな、ということです。確かに営業成績や目標など、こういう数値的なものも重要かもしれませんが、優先的には質というものを重くみることが、これから未来に向けて重要になってくるのではないかな、と思います。

3.ネットワーク(一人ではなくみんな)

では、三つ目のキーワードにいきたいと思います。一人ではなくみんな、ということを、インターネット通販の中で僕は感じています。一口に表すとネットワークの時代だ、ということです。

 意欲があれば、インターネットも使いこなせる

皆様の中で、例えばパソコンとかインターネットが使えなければ、教えてもらえばいいわけです。要は意欲の問題ではないでしょうか。確かにキーボードに慣れてない、ということもあるかもしれませんが、とにかくそういうことに強い若い人と手を組んで教えてもらいながら、ギブ&テイクでやっていけばいいだけの問題だと思うのです。当社の場合も家族でやっているものですから、親子、世代間の協力というのが一つのキーワードと言ってもいいかもしれません。父や母達が今まで店売りで培ってきたノウハウを、僕ら若いものがデジタルとかインターネットを使って、手を合わせて、そしてお店として立ち上げた、というだけのことです。強い人はたくさんいるのですから、そういう人を上手に使ってビジネスに持っていけばいいと思うのです。それができなければやはり意欲の問題で、やる気がないのではないか、というふうに言えると思うのです。

僕の場合も文系出ですから、パソコンのことはあまり知りませんでした。幸いなことに、豊橋には豊橋技術科学大学という国立の大学がありまして、高専、工科系の高等学校から優秀な人材が集まっています。そこの学生部に行ってアルバイトを募集し、そしてパソコンを教えてもらったという経過がありました。ですから、そういったことをやっていけば、十分文系の人間でもパソコンに疎い者でも、なんとか使っていけるというようなことが言えると思うのです。

 違いを受け入れてこそ、新しいものが生まれる

もう一つ思うことなのですが、やはり豊橋ってところは特にそうなのかもしれません。また皆様の場合、浜松の方が多いと思うのでピンとこないのかもしれませんが、豊橋というのは非常に保守的なところなのです。僕は、浜松ってなんか羨ましいな、って思います。経済的なものですが、どうしてこんなに豊橋と浜松は差がついてしまったのかな、と。やらまいか精神といったものが、根底にあるのでしょうけど、一つには、違いというのがキーワードになると思います。違いというものを受け入れる、というのが豊橋の人はちょっと苦手なのです。自分たちの輪をつくり、自分たちの仲間意識が強く他の人を寄せ付けない、それで事業をしている人が多いと思うので、なかなか成長しません。その点、浜松というところは、違った人も受け入れるような開放的なところを強みとしてお持ちではないのかな、と思うのです。

これの究極の例がアメリカ合衆国だと思います。アメリカというところは、とにかくこの「違い」を歓迎し受け入れる、そういう国じゃないかなと思うわけです。いろいろな民族の人がごちゃ混ぜで、シリコンバレーなどに行っても、いろいろな国籍の人達が集まって、そして、こういったIT関係のものをクリエイトしているわけです。やはり、ものを生み出す場合には、同じような人が集まっていてはなにも生み出されないんですね。違った人が協力しあって、初めて新しいものが生み出されるわけで、アメリカ合衆国はその点懐が深いと思います。今までは一人の優秀な人がいて、なにかをつくっていけば良かったのかもしれませんが、これからはやはり、違った人を集めたネットワークを組んで新しいものを生み出していかなければ、周りには勝っていけないという状況があるんじゃないかな、と思います。

 使い手の声を丁寧に聞いて、公開してゆくこと

当社のHPも、実は当社がつくっているHPというよりも、やはりネットワークによってつくられている面もあります。皆様の意見を反映させて、それを地で行くと言いますか、見てくれている人が教えてくださる、「この使い心地はこうだったよ」「この鍋の使い心地はこうだったよ」といった情報が重要だ、と思っています。ですから、お客様の評判というコーナーを一番てっぺんに掲げています。そして、そういう情報は常に入ってきます。これもやはり、ある意味でネットワークではないかな、と思うわけです。

もちろん、いい声もあれば、悪い声もあります。それに対して僕らが悪い声を聞くと、どうしてもふさいでしまい、できれば避けたい聞きたくない。けど、やはりそこが、分かれ道だと思います。そういった声を聞けるか聞けないかが、明日があるかないか、未来があるかないか、だと思うのです。人間というのは、とにかく偏る性質を持っていると思います。どこの会社でも、大きくなって自分の会社はすごいと思うと、だんだんとだめになってくるということは、歴史が教えてくれていますよね。非常にカリスマ性のある有能な人であっても、権力者となってしまうとやがて裸の王様になっていく、人の意見などを聞けなくなってしまうところはありますね。ですから、第三者の公正中立な仲介役といった存在はどの世界でも必要になってくると思います。こういうものを、会社の中にですとかビジネスの中に持ち込んでいくことが、今後ますます必要になってくると思います。

メーカーが自分のところでHPをだして、そして売れば一番簡単ではないか、中間マージンもなく、一番消費者の人に喜んでいただいて、届けれるのではないか、というふうに思うかもしれませんが、このことを考えた場合に、小売店の存在意義みたいなものが見えてきます。「メーカーの横暴を許さない検察官」という言い方がかっこいいなと思って僕は考えだしました。小売店の立場としては「メーカーの横暴を許さない検察官」であり、消費者の立場から言えば「消費者の利益を守る弁護士」という位置に小売店というのがおかれていて、そのような存在がなければ、メーカーにとっても消費者にとっても、長い目で見れば結局は利益にならない、ということが言えるのではないかな、というようなことを考えています。

4.アイ(自分ではなく他者)

そして最後、四つ目のキーワードです。自分ではなく他者なんだということを、勉強させていただいています。ネットワークを形成するためにも、仲間をいれるためにも、やはり共通のコンセプトが必要ですよね。本当にお客様が満足してくれる究極のサービスってなんなのかな、ということを考えた場合にですね、一時的な利益とかではなくて、自分っていうものを離れたお客さんの立場になる、つまり仲間も増やし、助けてくれて、お客さんも喜んでくれる、そういうことなのではないかな、と思います。

 上辺の顧客満足ではなく、本音の顧客満足

一時CS、なんていう言葉がよく言われました。CSとはCustomer satisfaction(顧客満足)のことですが、この言葉が僕には非常に、みんな上辺で言っているように、つまり本当の顧客満足というよりも、自分のとこが儲かるので、結果として、利益になるのでこれをするという、そういう下心があっての顧客満足ではないかなと、思えていたのです。商売、ビジネスというのは結局は金儲けなんだよ、結局は利益を確保することなんだよ、なんかそういう風潮がこの日本の社会に存在し、間違ったビジネス観があるのではないかな、と僕は個人的に思いますね。本当にいいビジネスができる人というのは、確かに採算のことも考えなくてはいけないんでしょうけど、優先順位としては、まずお客さんにいかに仕えるか、お客さんにいかに喜んでもらえるか、ということを考えることのできる人だと思います。こういうことを地でやれば、本当にお客さんは喜んで、結果としてお金もいただけ儲かる、ということが言えると思います。けど、ここらへんがですね、本音の顧客満足と上辺の顧客満足があるように思えてならないんですね。

当社のHPでは、とにかく本当にお客さんに喜んでもらい満足してもらう、そういうページでもやってみよう、それでだめだったらだめでいいじゃないか、というところからスタートしました。僕らの世代っていうのは、お金ってあまり魅力はないんですね。やはり生きがいだとかやりがいだとか、そういうことを求めている仲間が多いように思うのです。モノが溢れている満ち足りた中で、温室の中で僕らは育ってきたと思います。ですから、お金がそんなにほしいとは思わないんです。自分が生かされて、誰か人に喜んでもらえたときに、本当にそのときに生きてるな、という実感、喜びを感じることが僕は個人的にあります。要は、このことをとにかく地でやるということです。

日本語の漢字というのは、すごく上手にできていると思うのです。仕事という字は、人に仕える事って書くんですね。なるほど、ビジネスっていうのはお客さんに仕えることなんだ、これがずばりそのことなんじゃないかな。働くという字は、人のために動くって書きますよね。本当にこの気持ちを持って、僕らがビジネスに、事業にあたれば、それこそほんとうに究極の一番いいサービスができ、本当にいい仲間がまわりに集まってきて、よし、やらまいか、という雰囲気がでてくるわけですね。誰か一人が何か自分の野心で動き、金儲けがチラチラする、そういうものではやはり人は集まらないし、長続きはしないと思うのです。共通のコンセプトで、本当に人のためにやってみようじゃないか、というところに人はどんどん集まってくるわけですから、これは大きい話でもありますし、僕らのような小さな店でも、このことはとても重要なことではないかな、ということを思います。

 小さなこと、ひとりを大切にするのが原点

そういう意味で、僕の大学の先生がおっしゃったことですが、僕が心にとまっている言葉があります。小売業ってどうして小さい、という字を書くのでしょう。夢を持ってる人は、若いときは小さいという字にはなんとなく、負い目とか劣等感を感じているような気がして、大売業のほうがいいじゃないか、と思うわけです。最近、そういうことが解ってきたのですが、小売業とは小さく売って生業とする、そういうビジネスなんだよということなのだと思います。きめの細かいサービス、例えば当社であれば、クレーム処理や返品処理、カタログ送付とか、部品等細かいものの販売ですとか、メールの相談ですよね。本当に小さなことですが、小さなことを大切にするところに小売店の繁栄があるんだ、小売店というのは本来そういうもんなんだ、と感じています。こういう小さいことを大切にしてやっていく、そこに信用だとか評判だとかが、生まれてくるのだと思います。

ネット通販の中では、とにかくこの部分がよくわかります。「口コミ」という言葉がありますが、僕なりに言うと「eコミ」というのがあるのではないかな、と。電子メール上でお互いにその評判を言い合うと、これはもう口コミよりも速いわけです。誰かがメールで打ち込んで、それを同報として送信することが、メールの世界ではできるのです。一人の人が1000人の人間関係を持っているとしたら、その1000人にいい評判というのは伝わって、一気に広がっていくわけです。当社のネット店は、未だかつて宣伝したことはないです。というよりも、このeコミで十分といいますか、いいサービスをしてればお客さんがお客さんを呼んでくれるという、商売の一番の原則中の原則がネットにも存在するのです。

とすれば逆のことも言えるわけですね。一人のお客さんが不満を抱いたとしたら、あのお店は悪いよという評判が、わっと広がってしまうわけです。お店としては、それは本当に痛手です。けど、そういう状況にあるということは、小売店にとっては本当は有難いことだと思います。ですからなおのこと僕らには、本当にお客さんに対して細かいところまで気を配ってサービスをしていく、ということが問われてくると思います。そのための精神に、本当に人に仕えるとか、人のために動くという、そういう動機がなかったら、長続きしないのではないかな、と思います。

 幸せを与えれば、幸せは返ってくる

人に仕えるということは、奴隷のようなマイナスなイメージが日本の風土にはあるような感じがします。Serviceという言葉がありますけど、英語ではこれをどのようなニュアンスとして受け止めるのでしょうか。仕える、ということは、なんとなく嫌なニュアンスがあるように僕も思うのですが、英語のServeという言葉を考えると、誇り高い、気高いような、そういうニュアンスを持っているような感じがします。人のために仕えるとですね、自分にその喜びが返ってくるといいますか、お客さんが喜んでくれて満足してくれて、そういうメールを頂いたり、手紙を頂いたりするとですね、こっちも幸せになれますし、幸せというのはそういうことではないのかな、と思います。自分のために幸せになろう、自分のためになにかをしよう、ということは、結局は幸せはどこかに逃げていってしまうでしょう。けれども、人のために誰かのために、なんとか尽くしてやっていこうとすると、幸せはやってきてくれる、そんなことが言えるのではないかな、と思います。

利益に対しても、そういうことではないかな、と最近思いますね。売上が伸びるとか成績が上がるとかいうことに関しても、一生懸命このことを僕らが追い求めるのではなくて、とにかくお客さんのために、ということをやっていれば、結果として営業成績とか儲かるだとか、利益だとかいうこともついてくるのではないでしょうか。利益よりも他の、理念とかのために仕えたり、サービスをしたりというものを持っている企業というのは、長く繁栄することが実証されてるみたいですね。商売というのはそういうものなのかな、ということを思います。

結論「やらまいか精神」遠州の未来人

最後にですね、遠州の未来人、ということでお話したいと思います。長谷川保さんという方を皆様はご存知でしょうか。この方は、聖隷病院の創設者、理事長さんです。聖隷の福祉事業がどこから始まったのかをお話したいと思います。長谷川さんもクリスチャンですが私もそうです。

長谷川さんの高校時代の後輩に、結核になってしまった人がいました。結核というと、喀血をするみたいでして、その方も結核になってしまったとき、みんなが嫌がって、その人が居れるところがなくなりました。この長谷川さんが、後輩ということもあったのでしょうか、それなら彼をみてあげよう、ということで、5人の仲間でお金を寄せ集め、その彼のために家をつくってあげて、お世話をしてあげたのです。もちろんボランティアで、自前でやったわけです。そうしたら、実はそういう状況の人が他にもたくさんいて、次々にそこに集まってくるのです。そうなったとき、そこの地主さんは肺結核の人が来るからということで、追い出してしまったわけです。ですから、長谷川さんたちは3回移転して、いろいろなところをたどっていました。

そんな時に、その人たちがやってることが素晴らしいということで、渡辺医院さんが、無報酬で応援してくれてたのです。更に生活協同組合をつくった賀川豊彦という人が、全国に長谷川さんがこういうことをやってますよ、ということを知らせたのです。そしたら、たくさんのお金が集まってきて、三方原の(聖隷病院が)今あるところなのでしょうが、県有林の払い下げがあるということで、そのお金で21000坪を購入できたのです。それが聖隷の始まりであり、そこから広がっていったのです。

 クリスマスに奇跡が起った聖隷の物語

ところが、事業が行き詰まってしまったときがありました。長谷川さんは奥さんに、「もうだめだ、もうやめよう」と言ってたときのことです。 くしくも12月24日のことだったのですが。お巡りさんが入ってきまして、県の知事から呼び出しがあったから、明日すぐに行くようにという知らせがきたのです。そしたらなんと、この長谷川さんの事業に対して、天皇陛下から金一封が下ったということでした。お金もそうだったのですが、天皇陛下から認められたとなれば、周りの人の理解も一気に深まり、ぱたりと迫害や追い出しがやんでしまって、みんなが協力してくれるような状況になってきたのです。それが、クリスマスの日の物語だったというような話が残っています。信じるところには必ず道は開かれる、ということを、長谷川保さんという方は、見せてくれたのです。今年の4月から介護保険も導入されて、福祉のサービスというものが課題となっている中で、ますます長谷川さんの聖隷は注目を集めています。

 人のために尽くす愛こそ、ビジネスの本質

この話は確かに、福祉、慈善活動なのかもしれませんが、ビジネスに対しても繋がる部分があるのではないかな、と思います。ビジネスというのはダーティな、お金儲けというようなイメージがつきまとう感じがしますが、そうではなく、この話と同じで人助け、人のためになる、というところに人は集まって、そして本当に最高のサービスを周りの人に分け与えることができるのではないかな、と思いました。新しいものをクリエイトするというときに、人のため子供のため、周りの人のため、そういうものがあってこそ、「やらまいか」という気持ちが起こってくるのではないでしょうか。

浜松市はどうでしょうか。昔は、ホンダだ、スズキだ、ヤマハだ、と、いろいろな事業が起こってきましたが、もう一度このやらまいか精神というのを奮い立たせるのが大切なのではないでしょうか。私も自戒をしながら言っているのですが、そこにはやはり、人のため、ということを忘れてはいけないのではないかな、と思うのです。

そこで最後に、人のために尽くす、仕えるということを、僕なりに「愛」と言葉で表現できるのではないかな、と考えます。愛という言い方も、人によって意味付け定義付けはいろいろかもしれませんが、人のために尽くすことを愛と定義するのでしたら、仕事は愛だよ、と言えるのではないでしょうか。そういう精神を持ったときに、初めて素晴らしい仕事ができるのではないかな、と思います。僕の挑戦でもあるこのHPの中で、これを地でいく、そういうページをつくっていきたいな、と思っています。(フライパン倶楽部 代表 高津由久 2000年8月7日静岡県浜松市プレスタワービル「遠州未来塾」より)