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2010年3月18日・2016年6月28日改訂

アルミ鍋 風評の考察

「アルミは有害である。アルツハイマー病と関連がある。だから、アルミのお鍋は使わない。」 当時、この情報を検証することもせず、盲目的に信じ込み、 アルミ鍋の製造メーカーが廃業に追い込まれる事態が生じました。 まさに風評被害の典型でした。 この点では、小売店も、プロとしてユーザーに正しい情報を流すことを怠った事を しっかりと反省すべきだと思います。 かたや、生活者一人一人も、その風評の根拠を自分で調べて、 自分で考えてみる必要があったのでしょう。

ここで、アルミと健康に関して改めて考察してみます。 まず、アルミに関する基礎知識。 アルミに関しては、食品中にも含まれているのです。 特に、貝類や海藻に多い。飲料水にも含まれます。 そして、体の中での代謝。そのほとんど(99%)は、体内に吸収されずに排泄される。 このようにアルミとは、アルミのお鍋に関係なく、 ごくごく身近にあり毎日摂取しているものなのです。 しかも、そのほとんどは体外に排泄される。 そこで、事の発端です。

1996年3月15日、ちょうど今日より14年前でした。 毎日新聞朝刊の報道で、アルミとアルツハイマー病との関連が取り沙汰されました。 その当時アルツハイマー病もまだよく認知されていない病気だったのかもしれません。 非常にセンセーショナルなマスコミ受けする情報だったのでしょう。 その後も、さまざまなマスコミで取り上げられます。 メーカーの対応も追いつきません。 その結果、百貨店などでは、アルミ鍋は棚から引き上げられ、ステンレス鍋に置き換わってしまうのです。

そこで、その関連を調べてみます。ネット上でもかなり情報が集まります。 結果、現時点では、アルミがアルツハイマー病と関連があるという明確な根拠はありません。 多くの専門家は、全く関係がないとまで言い切ります。 例えば、よく引き合いにだされるのが、国連の世界保健機構(WHO)の見解。 「アルツハイマー病に対してアルミニウムが原因となるような関わりがあるとする証拠はない。 アルミニウムは、生体内で人をはじめとするいかなる種においてもアルツハイマー病を引き起こすことはない。」 しかし、まだ未解明の事項は多いようで、関連が全くないと言い切ることもできないようです。 そこで、そのわずかな残されたリスクをどのように考えたらよいのか。 その前に、そもそも、どれほどのアルミが、お鍋から溶出されるのかに目を留めます。

アルミの1日平均摂取量は、大人で1〜10mgとされています。 米国食品医薬品局の調査では、すべての調理、取扱い、保存にアルミ製品を使用した場合、 1日当たり最大3.5mgとしています。 日本では、国立医薬品食品衛生研究所を主体とした研究で、 あらゆる調理においてアルミ製調理器具を用いた場合の試算値を、1日当り1.68mgとしています。 これらのデータは、「すべて」「あらゆる」を前提に試算されたものですから、 実際には相当少なくなるでしょう。 それにしても、1日平均摂取量を越えない程度なのです。 かたや、胃薬や鎮痛剤にもアルミは多く使用されています。 1日の服用量中に1000mg程度のアルミ化合物が含まれているものもあるそうです。 レベルが格段に違ってきます。お鍋からの摂取がいかに微量であるかが分かります。

さらに、それらの微量のアルミが体内に摂取されても、 そのほとんどが体外に排泄されることを考えあわせれば、 いかにわずかな量であることが分かります。 加えて、アルミは腐食しやすい性質があります。 酸やアルカリ成分に反応しやすいので、保存には適していません。 反応すれば、よりアルミは溶出することになるでしょう。 ですから、もともと酸やアルカリ成分の食材は避けた方が良いですし、調理後は何かに移し替えた方が良いでしょう。 酸やアルカリ成分の食材を使うことが多いようでしたら、 および調理後しばらく保存する傾向があるのでしたら、琺瑯素材などのお鍋を使うことがより相応しいでしょう。 そのような性質を把握していれば、さらにアルミの溶出ということは少なくなるでしょう。 このようなお鍋の特性を知ることも大切だと思います。

そして、わずかなリスクばかりではなく、そのお鍋の使い心地や結果としてできる調理という メリットの方にも、もっと目をむける必要があると思います。 その点で、アルミには魅力があるのです。 どの素材よりも厚手のアルミ鍋で炊いたご飯は個人的に美味しく感じます。 合羽橋の「お鍋の博物館」の店長さんが先日教えてくれました。 「良いお鍋とは、ご飯がおいしくできるお鍋です。」 同じくお鍋を販売する者として、なるほどと、うなずけました。 だから、味にこだわるプロ職人はアルミのお鍋が手放せないのです。 家庭では、14年前の報道をきっかけに、見事にステンレス鍋にシフトしてしまいました。 裏を返せば、味へのこだわりがなかったのかもしれません。 その点では、寂しく思います。 本当にわずかなリスクであるとしたならば、手軽に調理ができ、しかも結果としての調理が美味しくなるのであれば、 選択するに十分値するお鍋だと思います。

私たちの少し前の世代までは、日常的にアルミのお鍋を使ってきました。 そして、手軽においしいお料理を楽しんでいたのです。 少なくとも私の祖父祖母も、ほぼ生涯にわたりアルミのお鍋を販売し、自ら愛用していました。 幸いアルツハイマー病にも痴呆にもかからず、長寿を全うしました。 そして、アルツハイマー病や健康のことを広い視野で考えるのなら、 考えるべきことが他にあるとも思います。 喫煙や不規則な食生活などは典型的な危険因子です。 かたや、調理が楽しく、結果として美味しいとは、大変価値のあることだと思います。 現時点では、アルミのお鍋を使って、楽しく美味しく調理ができるのであれば、非常に健康的です。

そして、もうひとつ見落としてはならないことは、情報を鵜呑みにせず、自分で考えてみることでしょう。 無難にアルミのお鍋を避けたとしても、そこに自分で考えるプロセスがなければ、 もっと大切なことに及んでも真実を知ることがなく、今後もさまざまな風評に翻弄されてしまうでしょう。 以下、今回参考にしたページのリンクをご紹介します。

アルミニウムとアルツハイマー病の関連情報(国立健康・栄養研究所)
アルミニウムと健康(日本アルミニウム協会)
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