カトラリーは、どのようなものをお使いでしょうか。 わが業界では、実にさまざまなものが豊かに揃っています。 よく観察いただくと、形も重さも磨きも個々に違います。 当社では、小林工業のロマンスシリーズと マリールシリーズ、 日本洋食器の柳宗理木柄シリーズ、大泉物産のカイボイスンを定番として扱っています。 当社のセレクトしたものは、どれも新潟県燕市で作られています。
そこで、今回改めてカトラリーを見直していたところ、同じく燕市の燕振興工業のmAシリーズに目が留まりました。 私の中では、そのデザインが、スプーンがスプーンらしく、フォークがフォークらしく感じられて、 そのものが主張せず、食事を美味しく見せてくれるように思いました。 カトラリーを意識的に見ると、さまざまな発見がありますが、 このmAシリーズには、実用の美を感じることができました。
実用性とデザインとは深い関係があると思います。 やはり、道具である以上は、まずは実用性が問われますが、結果として使いやすいものが、 よいデザインになるとも言えるでしょう。 また、使いやすいとは、その価値が忘れられてしまうのかもしれません。 使いづらいものは、意識に表れるのですが、使いやすいものは、空気や水のように 自然なものとなって意識の中にのぼらない。 そこで、道具を選ぶ時に、考えてみると良いでしょう。 買う行為とは、その道具を意識することであり、そこに道具への愛着も生まれます。
その時の着眼点をあげてみます。 スプーンであれば、もちやすい。すくいやすい。のみやすい。 フォークであれば、もちやすい。刺しやすい。絡めやすい。食べやすい。 これらの手がかりとなるのが、まずは、重さでしょう。 使いやすいものは、軽すぎず、重すぎずのバランスがとれているとも言えるでしょう。 ただ、重さとは、個人差もありますし、使い慣れの要素もあります。 そこで、ご自分で使っているものを標準にしてみると良いでしょう。
その点では、当社で扱うものは、一般的にやや重さを感じるものが多いです。 そのため、実店舗等で現品を手にしていただくことをおすすめします。 このmAシリーズのディナースプーンは、やや重量を感じます。 そこがポイントでもあります。 厚みがあるので、耐久性にも優れますが、安定感があることで、コントロールが効きやすい。 また、これは主観かもしれませんが、食品の粗熱をとるといいますか、温度むらが少なくなるといいますか、 口に触れた時に薄いものよりも安心感があり、美味しさを感じれるように思います。
そして、すくう部分の深みおよび容量です。欧米のものは、比較的大きめの印象ですが、 日本人にとっては、それに対して小さ目が使いやすい印象です。 一口サイズというのが、日本人は控えめかもしれません。しかし、これも個人差がありますので ご自分に相応しいものを選んでみて下さい。 このmAシリーズのディナースプーンは、やや小さ目で日本人に相応しいと個人的に感じます。
フォークの場合は、先端の刃といったら良いでしょうか。 この部分の形状に着眼してみて下さい。 テーブルフォークであれば、4本刃が多いですが、3本のものもあります。 その刃の長さおよび、刃と刃の間の間隔もさまざまです。 これは使い慣れの要素が大きいと思います。 mAシリーズのディナーフォークは、バランスの良い重さで、 その刃先の形状も、オーソドックスと言えばよいでしょうか、 刺しやすく、絡めやすい印象です。
そして、mAシリーズのディナーナイフは、ディナースプーンと同じくやや重量を感じますが、 重さもあることで切りやすい、力が入りやすい印象があります。 こちらのデザインは、単品のみで見るとやや個性的ですが、仲間のスプーンやフォークと並ぶと 調和するのは不思議な感覚ですが、シリーズで揃えて使う点ではおすすめです。
ティースプーン、こちらはコーヒーや紅茶の時に加えて、プリンやヨーグルト、果物、 アイスクリーム等のデザート時にも利用します。 同じく重さとすくう部分の容量に着眼して、相応しいものを選んでみて下さい。 mAシリーズのティースプーンは、やや重量を感じて、やや大きめの印象はありますが そのデザインが、美味しさを演出してくれる感じがいたします。
そして、ケーキフォークは、ケーキや果物の時に利用しますので、 切り分けやすい、刺しやすい着眼で見て下さい。 mAシリーズのケーキフォークは、重さは感じられず、刃先の形状も良好で 柄の長さが個人的に丁度良い印象です。
もともとカトラリーとは、 洋食器由来のものですので、直輸入品であれば、やや大きめの印象があります。 そこを日本人に適したものとして燕市などでは製造されています。 その代表的な一つが、このmAシリーズのように思えて、私なりに、このシリーズが ジャパン・スタンダードと呼べるような感じがいたしました。 改めて、カトラリーを意識的に見ていただき、そして、自分の手にとっていただいて、 毎日使うものに相応しい自分のカトラリーを見つけて下さい。