おせち料理の季節となって来ました。そこで、昔から使われてきた理のある道具をご紹介いたします。
その一つが、栗きんとんに使われる馬毛の裏ごしです。
さつまいも等を裏ごして滑らかな仕上がりとします。
そこで、裏ごしとは。国語辞典によると、曲げ物の上部に布や網を張った道具で、あんや芋などをこすこと、および、その道具とありました。その上部に敷かれるのが、馬の尾の毛なのです。
この馬毛には理があります。まず、弾力性があるため、張っている網がしなります。
そのため、濾す材料にぴたりと当たる。
また、馬毛の断面が角ばっていることで滑らかな仕上がりとなる。
しかも、耐水性に優れている。金属ではないので、金気も生じません。
先人たちは、その滑らかな仕上がりを求めて、よくぞ、馬の尾まで探し当てたと感慨深いです。
使う時には、馬毛の部分を10秒ほど浸水させます。網目に対して斜めに濾していくと、
網目の角に材料が引っかかって通りやすくなる。
網目の中央部に食材を載せて、
ちゅうぼうこもの調理ヘラ細
などで、温かいうちの食材を
押し引いて行きます。網目と同じ方向で濾すと、網目がずれて広がってしまい、傷みやすくなるとのこと。使用後は水洗いをして、風通しの良いところに網目が上になるように置いて陰干しさせます。また、洗剤は使用せず、塩を網に振りかけて、手で廻すお手入れもあるそうです。あんや芋の他にも、茹で卵、和え衣、ソース類を滑らかに仕上がる時に使われます。
出汁にもスープにもご利用いただけるでしょう。病人食や離乳食にも相応しいです。
このような道具を使って、繊細な舌触りにこだわって来たのが、日本の伝統と言えるでしょう。
ミキサーあるいは金属網の裏ごし等で代用してしまうことが多くなり、
馬毛の裏ごしを作る職人さんも、ほとんどいなくなってしまった状況です。
それは、味へのこだわりがなくなったお粗末な状況を露呈しているようです。
このたび、さつまいもをじっくりと焼いて、馬毛で裏ごしをしてみました。
網目の裏側にひっついたものをヘラで取り出してペロリといただきました。
いつの間にか忘れていた懐かしい味わいでした。これだけで十分ごちそうです。
マッシュポテト、スイートポテト・・・きちんと裏ごして丁寧に料理をしてみると、
美味しさだけではなく生き方も正されるようです。お正月に栗きんとんを作る。
今一度、このような道具を通じて、先人たちの追求して来た本物の味を継承して参りたい
ものです。
カンダ 木枠本馬毛 裏ごし24cmとなります。
網目は、縦毛と横毛が等間隔で編まれています。枠はひのきとなります。
右写真のように裏返せば、出汁とりをはじめ、ザル用途としてもご利用いただます。